責任ある飼い方とは 教員負担増、地域や組織で協力を 変わる学校飼育(下)
2025年02月04日
子ども・教育

動物病院で終生飼育するハヤブサに、興味津々の児童たちと伊藤圭子獣医師(右)=2024年12月4日、奄美市名瀬
動物飼育について奄美市の朝日小は昨年12月、屋外から空き教室でのケージ飼育へ移行した。現在飼育している5匹のウサギが最後の動物飼育となる。今後は新5年生を対象に毎年度、獣医師などによる授業を行い、飼育を取りやめた理由を伝えながら、新しい形で命の尊さを学ぶことを目指す。
奄美市内の21小学校のうち、校内でウサギなどの動物飼育を行っているのは1月21日現在、朝日小と名瀬小、奄美小の3校。18校はメダカやコイ、昆虫の飼育のみとなっている。
名瀬小ではウサギ2匹(雌雄不明)とミシシッピアカミミガメ1匹を屋外小屋で飼育しており「2匹が虹の橋を渡った(亡くなった)後、新しい動物を迎え飼育を継続するかは検討が必要と考えている」という。
奄美小では昨年夏ごろ、屋外小屋で飼育していたウサギ2匹が亡くなった。現在は「あきら」と名付けられた雄ウサギ1匹を屋外で飼育。土日は教頭と校長が交互に世話をしている。飼育費は他の予算と一体のため都度必要な分を回しているという。
■教員負担も課題
文部科学省は小学校学習指導要領(2017年改訂)で学校動物飼育について▽管理や繁殖、施設や環境を配慮する必要があり、地域の専門家や獣医師など支援者と連携する▽休日や長期休業中の世話は児童や教師、保護者、地域の専門家などによる連携した取り組みが期待される―などとしている。同省が22年度に実施した教員勤務実態調査では、小学校教諭の平日1日当たりの「在校等時間」と、時間外勤務となる「持ち帰り時間」を合わせると、実質の労働時間は11時間23分となった。働き方改革を背景に、学校飼育を廃止する学校は全国で増加している。
県獣医師会は学校飼育動物支援事業の一環で、24年度に県内2小学校でポニーや大型犬とのふれあい授業を実施した。23年度は教員向け飼育動物研修会も開催。同会は「奄美群島からも要望があれば、同様の対応を検討する」とし、伊藤圭子獣医師も「費用面も含め困っている学校は相談してほしい。飼い方講座や不妊化も協力できる」と話す。
■命の尊さ、温かさ
朝日小での講演には、伊藤獣医師の病院で終生飼育するハヤブサが同行した。生き生きとしたハヤブサを目の前に、児童たちは「かっこいい!」「瞳が真ん丸。かわいい」「翼がきれい」と目を輝かせた。大きく羽ばたく姿に思わず悲鳴を上げる児童もいた。
伊藤獣医師は「動物の美しさ、かっこよさ、命のすごさは飼育していれば伝わるわけではない。私が小学生の時も、ただウサギが小屋にいて、残飯が置かれていて。亡くなっても何もできなくて、次見に行くともう姿がなかった。『先生、あの子どうしたの』って聞いても教えてくれない。教えてもらえないと悲しいとも言えない。それでは意味がない」と訴える。
講演後、伊藤獣医師のもとに児童たちからの感想文が届いた。「ウサギたちの寂しさを知らなかった」「ウサギたちの命が尽きるまで積極的にふれあっていきたい」。同校の取り組みに共感した島外有志からは、ウサギ用の牧草や飼育用品が学校へ送られた。
朝日小の吉里博之校長は「責任ある飼い方とは何か。教員負担が増え続ける中では選択も必要と思う。世界自然遺産の島で、島の宝を子どもたちに誇りに思ってもらうために、奄美だけのやり方があっていい。奄美博物館や奄美海洋展示館と協力したり、教員が飼育を学ぶ機会もつくっていきたい」と話した。
(佐藤頌子)