クロウサギは増加傾向 事故や猫対策へ啓発強化 農業被害対策も盛り込む 希少野生生物保護増殖検討会

2024年02月11日

政治・行政

アマミノクロウサギなどの生息状況について報告があった検討会=9日、奄美市名瀬

奄美希少野生生物保護増殖検討会(座長・石井信夫東京女子大学名誉教授、委員6人)の会合が9日、奄美市役所であった。国の特別天然記念物アマミノクロウサギの個体数は近年増加傾向の一方、交通事故が多発している状況が報告された。次期実施計画案では、放し飼いのペットや山中で野生化したノネコを含む「屋外ネコ」への対策強化、クロウサギによる農業被害対策なども盛り込んだ。

 

会合にはオンライン参加も含め関係者約50人が出席。環境省からアマミノクロウサギなど希少野生生物の推定生息数や分布範囲、交通事故の発生状況と、関係機関による事故防止対策について報告があった。

 

2023年のクロウサギの交通事故発生数は、奄美大島が過去最多の147件、徳之島は過去2番目に多い29件で、両島の合計は調査を開始した00年以降で最も多くなった。

ケナガネズミは23年の速報値で、奄美大島が過去最多の59件、徳之島は過去3番目に多い6件だった。23年度は市街地でのケナガネズミの目撃例や事故も目立った。

 

外来種対策では、マングースの根絶判断の手法について今後検討を進めるとした。野生化した猫(ノネコ)に関して、奄美大島では23年度(12月末現在)の捕獲数が101匹。18年7月からの累計は捕獲521匹、うち譲渡517匹、収容中の死亡3匹となった。

 

徳之島の23年度(2月8日現在)の捕獲数は48匹。環境省から事業を受託している同島の環境保護団体から「猫は愛玩動物であり室内で飼養するべきという理解が広がっていない。さまざまな立場の住民との直接的な意見交換の場が必要だ」との指摘があった。

 

アマミノクロウサギ、アマミヤマシギ、オオトラツグミの保護増殖事業次期実施計画(24年度~33年度)の策定方針が示され、種の存続に影響を及ぼす減少要因の除去・緩和対策と生息状況把握の手法確立に向けた取り組み案について出席者が意見を交わした。

 

次期計画案には、室内飼育徹底などによる屋外にいる猫の発生抑制や、傷病個体の救護体制、飼育下繁殖の検討のほか、農業被害解決のためのデータ提供や調査協力、情報収集を行い、関係機関や地域住民へ還元することなどを盛り込んだ。

 

野生生物の交通事故増について、環境省奄美群島国立公園管理事務所の阿部愼太郎所長は、「生息数の回復による側面は強いものの、ドライバーの意識向上によって改善できる部分はまだある。ソフト、ハードの両面で事故を減らしていくことが重要だ」と述べた。