奄振交付金の拡充必要 県が総合調査報告書作成柱に

2023年04月04日

政治・行政

 

 

 

県が作成した奄美群島振興開発総合調査報告書

奄美群島振興開発特別措置法(奄振法)の期限切れを2023年度末に控え、県は奄美振興の新たな方向性を示す総合調査報告書を作成し、3月31日に公表した。世界自然遺産登録も踏まえた沖縄との連携強化や、奄振交付金の対象追加・拡充を図る必要があるとし、定住促進、自然環境の保全と利用の両立・文化の継承、稼ぐ力の向上、条件不利性の改善など6項目を柱立てして具体的な方策を整理した。

 

奄振総合調査は群島の社会・経済の現状、課題、振興開発事業の成果などを総合的に調査し、今後の方向・方策を明らかにするのが目的。県は22年度、奄美12市町村や民間有識者、各種団体の意向調査、奄美出身者組織との意見交換会、群島住民・事業所へのアンケート、パブリックコメント(意見公募)などを実施して報告書を取りまとめた。

 

報告書では地理的、自然的条件に起因して本土との間に所得水準や物価など経済面の格差がいまだに存在すると指摘し、奄振法の延長と充実の必要性を明記した。

 

振興開発に向けた方策では、▽空き家改修による住居の確保やコワーキングスペース(共用オフィス)の整備など移住者を受け入れやすい環境づくり▽鹿児島と屋久島、奄美群島、沖縄県が連携した共同プロモーションの実施▽スマート農業・スマート畜産技術導入による農業の「稼ぐ力」向上▽デジタルによる社会変革―などが並ぶ。

 

奄振交付金対象事業では、航路・航空路の運賃軽減に関して制度を拡充し、新たに奄美群島―沖縄路線を追加することなど、振興開発の効果的推進に向けた施策を盛り込んだ。

奄振総合調査報告書は奄振法延長の理論付けとなるもので、県は23年度に国の審議会に調査結果を報告する。県離島振興課は「世界自然遺産登録や地方回帰の流れといった追い風を生かし、今後の奄美振興につなげたい。地元市町村と一緒になって奄振法の延長・充実を働き掛けていく」としている。

 

報告書は県ホームページに掲載している。