輸血入手時間40倍に 救急医療の充実化訴える 大島郡医師会講演会 奄美市名瀬

2023年09月09日

政治・行政

多くの市民が耳を傾けた救急医療講演会=8日、奄美市名瀬

9月9日の「救急の日」を前に大島郡医師会は8日、奄美市名瀬のアマホームPLAZA(市民交流センター)で救急医療講演会を行った。県立大島病院の医師2人が、救急医療で課題となっている輸血用血液の供給体制の現状と、新型コロナウイルスへの向き合い方について講話。奄美群島で輸血用血液が迅速に確保できない状況があることなどを報告した。

 

市民約130人が来場。大木浩麻酔科部長は「離島の緊急手術と輸血供給体制」と題し講演。実際に県立大島病院で行われた手術の様子や、救急搬送時の医師らの取り組みを動画を用いて解説した。

 

それによると、奄美大島では緊急手術などに必要となる日赤の血液製剤を備蓄・管理していた民間の事業者が2018年に奄美市から撤退。直ちに必要な輸血用血液の入手に要する時間は、奄美大島で平均10時間と、それまでの40倍になったという。

 

実際の事例として、徳之島から夜間搬送された緊急患者の手術時に院内の備蓄血液では足りなくなり、島内からの供血による院内血で対応したことを報告。「奄美大島には日赤の血液備蓄所の再設置が必要だ」と訴えた。

 

森田喜紀臨床研修センター長は「コロナを越えて、これからの奄美」と題して講話。コロナは感染症法上「5類」に移行しても流行を繰り返すと指摘し、積極的なワクチン接種を促した。

また「コロナ以外の健康問題にも目を向けてほしい」と呼び掛け、奄美市では男性の65歳未満の死亡割合が国や県と比較しても高いことを指摘。「健康問題は島全体の『自分ごと』として考え取り組んで」と総括した。

 

講演を聞いた奄美市名瀬の女性(76)は「輸血用の血液があんな状況だったとは知らなかった」と驚いた様子。同市名瀬の男性(67)は「男性の寿命の短さはひと事ではない。健康であることが何より大切だと感じた」と語った。