移住者増やし集落維持へ 大和村名音、有志で空き家対策部会設立 専門家「画期的」と評価

2024年10月17日

地域

廃屋となっている空き家を調査するあまみ空き家ラボの専門家と名音集落住民ら=12日、大和村名音

大和村の名音集落(福山良平区長)の住民有志が、空き家を活用した独自の取り組みを進めている。今年8月に空き家対策作業部会を設立し、今月12日には集落主催でNPO法人あまみ空き家ラボ(佐藤理江理事長)の専門家を招いた集落内の空き家調査と講演会を実施。住宅確保や廃屋解体、子育て世代を含めた移住者受け入れが目的で、講演会には集落住民や役場職員など約20人が参加。空き家の利活用へ理解を深め、集落の維持・活性へ向け意見を交わした。

 

◆ゆるやかに人口減

 

村は今年2月にあまみ空き家ラボと空き家等に関する連携協定を締結。同法人は月に2回、依頼があった空き家の調査などで同村を訪れている。

 

名音集落は9月末現在、103世帯183人が居住。5年前の同時期は109世帯188人、10年前は110世帯208人と、ゆるやかに減少している。移住希望者からの問い合わせは年に4、5件あるものの、住宅不足が原因で受け入れ困難な状況が続いており、8月に福山区長と住民有志で空き家対策作業部会を設立。人口減少へ歯止めをかけ、集落機能の維持へ向け動いている。校区の名音小学校の児童数は現在15人だが、このままだと5、6年後には5人程度になることが見込まれ、学校存続にも危機感が募る。

 

◆空き家26件、廃屋も

 

大島地区消防組合大和分駐所が2023年に行った調査によると、名音集落内の空き家は26件。このうち廃屋は14件で、住居として活用できるのは12件。今月12日の調査では廃屋を含む10件ほどの空き家を回り、外観や室内の状態を確認した。中には以前の居住者の荷物が多く残った家屋や、壁や屋根がはがれ落ちて室内に植物が生い茂り、倒壊などの危険性がある建物もあった。

 

◆講演会で意見交換

 

調査終了後の講演会は午後6時から名音生活館であり、あまみ空き家ラボの佐藤理事長と大島地区マネージャーの森まゆみさんが、同法人が家主から借りた物件を移住希望者などに又貸しする「空き家サブリース」の仕組みや、小規模校区の活性化に向けたマッチング事業「親子ピア」などについて説明した。

 

親子ピアを企画した森さんは「応募条件として、入居希望者には必ずお試しの移住体験をしてもらい、集落行事にも積極的に参加できる方に来てほしい。入居希望者に寄り添って話を聞き、家主や集落の理解を得ながらゆっくり進めていきたい事業。いずれ名音集落でも実現できたら」と語った。

 

このほか、シロアリ被害や雨漏りなどの住居トラブル、相続問題、集落と入居者の相性、家賃設定の相場などについて活発な意見も交わされた。

 

◆活気ある集落へ

 

「空き家対策の部会ができたことは画期的。各地で講演会を行っているが、質問や意見がここまで多く上がったのは初めてに近く、住民の関心の高さを感じた」と名音集落の取り組みを評価する佐藤理事長。

 

福山区長は「集落民が空き家のことを自分事として前向きに捉えてほしいとの思いで活動している。空き家の利活用が動くことで集落に移住者が増えてくれることを願う」と展望を語った。

 

同部会では現在、週に1回会合を開いており、子育て世代を含む移住者受け入れの実現は来年度中を目指す。子どもの声が響き渡る、活気ある集落づくりへ本腰を入れて歩み始めた名音集落。奄美群島の多くの集落でも起きている課題であり、福山区長の言葉にもある、打開策を自分事として考える機運の醸成が不可欠だ。

(鈴木菜津希)