「おかえりなさい」親戚らが歓迎 ブラジル日系3世のカワサキさん 祖父母の古里を訪問 宇検村

2022年08月10日

地域

親戚や関係者らの熱い歓迎を受けたカワサキさん(前列中央)=6日、宇検村湯湾

「おかえりなさい、ユカさん」│祖父母が宇検村出身のブラジル日系3世、カワサキ・ダニエラ・ユカさん(25)が6,7の両日、同村を初めて訪れた。親戚らと交流して家族の歴史に理解を深め、ゆかりの地に思いをはせた。

 

カワサキさんは母方の祖父、故・文岡勝さんが同村生勝、祖母の賀津子さん(78)が同村湯湾の出身。賀津子さんは1957(昭和32)年に家族とブラジルに移住し、勝さんも60(昭和35)年に単身で渡航した。2人は現地で出会い結婚。賀津子さんの父と勝さんは、日系人が設立した「コチア産業組合」に所属し、サンパウロ州で農業に従事していた。

 

宇検村誌によると、同村からブラジルへの移住が始まったのは18(大正7)年。戦時中の中断を挟み、61(昭和36)年までの間に多くの村民が渡航した。最初の移民が渡ってから100周年を迎えた2018年には、村の訪問団がブラジルを訪れ、日系2世、3世らと親睦を深めた。

これまで鹿児島県にルーツを持つ日系人であることを自覚しつつ、祖父母の出生地は知らなかったというカワサキさん。「日本語を学び、家族の歴史を知りたい」と今年5月に来日した。現在、1年間の県費留学制度を活用して鹿児島大学で学んでいる。

 

留学前、祖母・賀津子さんから奄美や宇検村について教わったことをきっかけに祖父母の古里に興味を持った。同村の訪問には、県国際交流協会事務局の海外移住家族会が協力した。

 

カワサキさんの歓迎会は6日、同村湯湾の元気の出る館で開かれ、親戚や関係者ら約20人が参加。和やかな雰囲気の中、訪れた人たちはブラジルに渡った同村民たちとの思い出話などに花を咲かせた。

 

「おかえりなさい」と出迎えられたカワサキさんは「私のために皆さんが来てくれて感動した」と笑顔。勝さんのいとこに当たる文岡学さん(73)=同村生勝=は「小さい頃から兄弟のようにして育った。ユカさんは(勝さんの)面影がある。このつながりを大切にしたい」と感慨深そうに話した。

7日、カワサキさんは宇検村湯湾の共同墓地をお参り、先祖が眠る納骨堂に手を合わせた。この日は親戚の家を回ってあいさつをしたほか、ブラジルに移住した同村出身者らの義援金によって建設された「伯国(ブラジル)橋」にも訪れた。

 

案内したのは、ブラジル日系2世の高田小百合さん(61)。両親は同村出身で、カワサキさんの家族とは長年の付き合いだ。ブラジルで生まれ育ったが、26歳で来日し、結婚を機に同村湯湾に移り住んだ。

 

「賀津子さんのお父さんは頑固だが礼儀正しく、家族思いの人だった。サンパウロ州の中心地にあった家を訪ねたこともあり、とてもお世話になった」と高田さん。「ユカさんに会うのは初めて。とても気さくですてきな人」と目を細める。

 

初めての「里帰り」にカワサキさんは「宇検村は海が青く、自然豊かできれいな場所。いろんな人の話を聞いて家族について知ることができた」と満足した様子。「(同村から)ブラジルに渡った移民は、古里を愛し誇りに思う気持ちをずっと持っている。今回聞いたことや体験したことを、祖母や鹿児島県人会の人たちにも報告したい」と語った。

先祖が眠る共同墓地に手を合わせるカワサキさん=7日、宇検村湯湾