「伝統野菜は奄美の宝」 山形大・江頭教授が視察 「さまざまな立場で守り伝えて」 国内在来品種調査

2023年03月29日

地域

中村さんから栽培方法や利用方法を聞く江頭教授(右)=23日、宇検村湯湾

全国で栽培されている在来品種の作物について調査している山形大学農学部の江頭宏昌教授(58)が27日、奄美大島入りした。28日は瀬戸内町と宇検村を巡って地元で受け継がれている伝統野菜の生産地などを視察。江頭教授は「伝統野菜は栽培方法や食べ方なども含めてその地域の大切な文化であり、奄美らしさを構成するものの一つだ」と話した。

 

在来品種調査は農林水産省の受託研究の一環。日本各地の穀物、野菜、果樹、花などをデータベースに登録し、資料としてウェブ上に公開する。奄美関係では、奄美大島北部などで栽培されている田芋、奄美市名瀬の有良大根、瀬戸内町古志の古志大根などが登録される見込み。

 

調査には、地元有志でつくる奄美伝統作物研究会(森山力蔵会長、会員21人)が協力。宇検村では、同村湯湾の「アランガチの滝」近くで伝統野菜6種(ニンニク、ラッキョウ、ニラ、ヘチマ、里芋、サツマイモ)を栽培している中村千江子さん(65)の畑を訪問した。

 

中村さんは地元で「フル」と呼ばれるニンニクについて▽市販のニンニクよりも香りが強い▽塩漬けや砂糖じょうゆ、三杯酢などで漬物にして保存する▽若い葉は野菜として炒め物などに使う│などと説明。江頭教授はそれぞれの野菜の植え付け時期や栽培方法なども聞き取り、畑の様子を写真に収めていた。

 

中村さんが親から受け継ぎ育てている在来品種のニンニク

 

中村さんは母親から畑とともに伝統野菜の種を受け継ぎ、主に自家消費用として毎年栽培して翌年分の種を取っているという。江頭教授は「近年は作物の種を残し伝えるという知恵が失われつつある。伝統野菜などを地域の宝として関心を高め、生産者、消費者、流通、教育現場などさまざまな立場から守り伝えていってほしい」と語った。

 

この日は瀬戸内町古志集落でも伝統野菜古志大根の栽培状況を調べたほか、校内で大根を育てている同町立篠川小学校(吉鶴正樹校長)を訪ねた。調査は2日間で、29日は大島北部を視察する予定。

 

データベースは「農業生物資源ジーンバンク」のホームページ内に専用ページを設置し、今年度中に40品目を公開する。来年度以降も継続し、最終的に300品目以上の登録を目指す。