「1個でも違反」の意識を 気軽な採捕、密漁の恐れ

2022年07月06日

地域

海辺には密漁期間や漁業権の対象となる生き物が記載された看板が設置されている(資料写真)

奄美海上保安部や奄美大島内の各漁協などは近年、海辺の生き物を禁漁期間中に捕ったり無許可で採捕する「密漁」への対策を強化している。今月1日にはサザエなどを密漁したとして、漁業法違反の疑いで男女7人が鹿児島地検名瀬支部へ書類送検された。「昔はここまで厳しくなかったはずだが…」との声も住民から聞かれる中、奄美海保は「採捕が禁止されている生き物を1個でも捕ったら違反。軽い気持ちで捕ることで、漁業者への影響が出ることも知ってほしい」と注意を促している。

 

■刑事罰に問われる対象

 

奄美海保や県などによると、密漁として刑事罰に問われる生き物は大別して三つに分かれる。一つ目は水産庁が「特定水産動植物」に指定するナマコとアワビで、3年以下の懲役か3千万円以下の罰金が課せられる。

 

二つ目は各漁協が漁業権を設定する貝類、海藻類など。奄美大島の漁協では主に、サザエやマガキガイ(トビンニャ)、タカラガイ、モズクなどが該当し、漁業権を侵害すれば100万円以下の罰金となる。

 

三つ目は県が漁業調整規則で定める水産動植物だ。種類ごとに採捕の禁止期間や大きさの制限などを細かく設定しており、例えばトコブシは10月1日から翌年4月30日までを禁止期間、殻長5㌢以下が対象となる。違反すれば6カ月以下の懲役か10万円以下の罰金が課せられる。種類ごとの規定は県ホームページで閲覧できる。

 

■資源枯渇、密漁対策強化

 

1日に男女7人が書類送検されたケースは、奄美市名瀬小湊の周辺海域で5月18日、漁業権または入漁権を持たないままサザエなどを採捕したことによるもの。名瀬漁協と奄美漁協が漁業権を設定する貝類の採捕に該当する。7人はそれぞれサザエやヤコウガイ、タカセガイなどを1個から23個の計61個を捕ったとされる。

 

奄美海保管内の2020年以降の取り締まり実績は20年と21年、県の漁業調整規則に定めた禁漁期間中のイセエビ採捕が各1件。特定水産動植物と漁業権侵害の事例はなかった。

 

奄美海保警備救難課の中條智課長は「密漁は昔から違反だが、以前は資源が豊富にあったこともあり、漁協関係者が黙認するケースがあった。資源が減少しつつある現在では、特に2年ほど前から各漁協が方針を変え、密漁に厳しい姿勢で臨むようになった」と指摘する。

 

■ルール守り採捕を

 

海辺での生き物採捕について住民からは「海は漁協だけのものではない」「1個でも捕まるなんて厳しすぎる」などの声も聞かれる。奄美大島のある漁協で理事を務める60代男性は「漁協の組合員、准組合員はお金を払って漁業権を得て、大きさや禁漁期間などルールを守って生き物を捕っている。どうしても捕りたいのであれば漁協へ加入してほしい」と訴える。

 

漁業権の対象になる生き物はある海域では採捕可能だが、別の海域では密漁に当たるケースもある。中條課長は「海辺に設置している密漁禁止を啓発する看板には、漁業権の対象となる生き物が記載されていることが多い。知らずに密漁となることがないよう、地元の漁協に問い合わせるなど確認してほしい」と呼び掛けた。