アマミコ降臨地へ参拝 長年信仰伝える大山さん 奄美市笠利町
2023年10月24日
地域

女神アマミコの降臨地に参拝する住民ら=23日、奄美市笠利町の大刈山山頂
旧暦9月9日(クガツクンチ)に当たる23日、奄美市笠利町の大山幸良さん(94)と家族らは開闢(かいびゃく)祖神「アマミコ」の降臨地とされる同市笠利町の大刈山(183メートル)山頂へ参拝した。代々「アマミコさま」を信仰し登拝を続けてきた大山さんは、「奄美の島々を築いた神様の場所として、昔は多くの人が願掛けに来ていた。大切に受け継ぎ伝えていってほしい」と話した。
大山さんによると、大刈山に降りた女神アマミコは海を流れていた島を立神(たちがみ)(奄美大島の海沿いの集落にあって神聖視される岩や小島)でとどめ、奄美群島の基を築いた。最初は赤く焼けた石の塊だった奄美の島々へ、アマミコの命を受けた「もろもろの神々」が米や塩を与え、人が暮らせる場所となったという。
願掛けを行うのは主に旧暦5月か9月の9、19、29日と正月。1901年には地域住民によって参拝しやすい山の中腹にも碑が建てられ、同所は71年に旧笠利町の文化財に指定されている。かつては近隣の住民のほか奄美大島各地から家内安全や武運長久を祈願する参拝客が訪れていたが、戦後廃れた。
23日は大山さんらの呼び掛けで、家族や出身者、研究者ら31人が登拝。山頂では島唄や八月踊り、六調なども奉納された。降臨地は航空自衛隊奄美大島分屯基地に隣接しており、この日は高齢の大山さんのために山頂近くまで敷地内の車両通行が許可された。
大山さんは「参拝の際は踊り清めることも大事なので、八月踊りを行えてよかった。アマミコさまの物語を頭に置いて拝んでもらえたらうれしい」と話していた。
奄美大島の開闢神話では女神アマミコの降臨地を「アマンデー(あまみ嶽)」などと呼び、大刈山のほかに宇検村と大和村にまたがる湯湾岳(694メートル)にも降臨伝説がある。