アートの力で空き家対策 若手アーティストが活用法探る 伊仙町面縄

2024年02月01日

地域

空き家を活用して開かれた作品観賞会=27日、伊仙町面縄(提供写真)

奄美群島の空き家問題の解消に取り組むNPOあまみ空き家ラボが主催する「徳之島アーティスト・イン・レジデンス」が20日から30日まで伊仙町面縄であった。各分野で活躍する若手アーティスト計5人が来島。集落の空き家に約10日間滞在しながら創作活動のほか、ワークショップ、作品鑑賞会などアート関連のさまざまなイベントを開催。地元住民と交流しながら地域に眠る空き家の新たな活用法を探った。

 

アーティスト・イン・レジデンスとは地域外からアーティストを招き、滞在中の活動を支援する事業。伊仙町での開催には国交省の「住宅市場を活用した空き家対策モデル事業」を活用した。武蔵野美術大学非常勤講師で同NPO理事の田邊寛子さん(49)の呼び掛けに応じた映像、写真、染織、絵画などの分野で活躍する若手アーティストが携わった。

 

アーティストらは20日から31日にかけて面縄の空き家に滞在。取材や観光、創作活動のほか、27~28日にかけては島内アーティストの作品鑑賞会やお絵描きワークショップなども開催。事業のサポートで来島した同大の学生の卒業制作作品の発表会などもあり、空き家を活用してさまざまなイベントを実施した。

 

30日は関係者10人が参加した意見交換会があり、アーティストらからは「籠や編みがさなど優れたものづくりの才能を持つ地元の人に会えた」「高齢者の方々が島の役に立ちたいと考えて行動していた」などの報告があった一方、「事業として根付くには時間がかかる」「空き家が活用できること自体をもっと発信する必要がある」などの課題も挙がった。

 

写真家の力武拓也さん(29)は「地元の人と交流できて単に観光で訪れるだけではできない貴重な体験ができた」と感想を述べ、「島独特の動植物など魅力的な被写体にも出合えた。今回は冬だったが他の季節も見てみたい」と話した。

 

田邊さんは「今回の参加者には創作だけに限らず島の空き家で滞在する事自体の調査にも協力してもらった。各個人で島の人との交流が生まれていたことは大きな収穫」と手応えを示し、「来島したアーティストと地元の人が共同で調査や創作などに取り組むことを次の段階の目標にしたい」と語った。

 

同NPO理事の中村浩三さん(62)=同町検福=は、「単に宿泊するだけでなくイベント会場としての活用など空き家にはもっと活用の余地がある。今回のような取り組みを新たな活用につなげて空き家の保存と活用に役立てたい」と期待を込めた。