古文書からカツオ漁業探る 民俗学会の名越護さん主宰 宇検村生勝

2023年04月24日

地域

宇検村生勝のカツオ漁業について語り合う「探る会」の参加者=22日、奄美市

宇検村生勝集落で明治末期から大正初期まで活躍した蒸気カツオ漁船「漁宝丸」の連帯債務者名簿とみられる古文書が見つかり、奄美市名瀬の市民交流センターで22日、生勝出身で鹿児島民俗学会会員の名越護さん(80)主宰の「明治、大正時代の宇検村生勝のカツオ漁業を探る会」が開かれた。名簿記載者の子孫ら9人が参加。当時の記憶をたどりながら集落の漁業や文化などについて語り合った。

 

名簿は、保池美智子さん(84)=奄美市=が生勝集落にある実家で遺品整理の際に発見した。保池さんの祖父ら24人の名前と住所、抵当に入れた土地などが記されており、名越さんの祖父も名を連ねた一人。

 

宇検村でのカツオ漁業は、1900年に隣町の西古見集落で朝虎松が漁を始め大きな利益を上げたことを契機に、屋鈍集落の吉虎次郎が操業を始めた。村内の10集落でカツオ漁業組合が設立され、大正中期から昭和初期にかけて最盛期を迎えたという。生勝ではカツオ一本釣りが21年ごろまで行われていたとされる。

 

名越護さん(前列左から3番目)を囲む「探る会」の参加者=22日、奄美市

 

参加者らは名簿を基に、伝聞や記憶と郷土資料などとを照合。船名の割り出しや当時の漁業経営の状況、名簿が公になってこなかった理由などについて情報や意見を交わした。

 

生勝の生活史の編さんを進めている名越さんは、名簿を「集落に残る数少ない貴重な資料」と位置付け、同会の開催経緯について「カツオ漁業における先祖の苦労を知り、記録することが私の使命」と話した。

 

保池さんは「参加者の最高齢は昭和10年生まれで、私が知り得る情報もわずか。名簿が10年早く見つかっていれば詳細を詰められたかもしれないが、生勝の郷土資料として、少しでも役立てられることを願う」と話した。