地域社会)軍政下の風景「すごく鮮明」 ハーリング氏が見た奄美 名瀬で講演会と写真展 復帰70周年記念

2023年12月24日

地域

ハーリング氏が米軍政下の奄美大島で撮影を行った経緯や当時の状況などを解説した講演会=23日、奄美市名瀬

奄美群島日本復帰70周年記念講演会・写真展「ハーリングが見た軍政下の奄美」(鹿児島大学国際島嶼(とうしょ)教育研究センター、オックスフォード大学オールソウルカレッジ主催)が23日、奄美市名瀬のアマホームPLAZA(市民交流センター)であった。70年前の奄美大島をカラー写真で振り返り、その暮らしぶりをハーリング氏の言葉や研究者の考察に

ハーリング氏が米軍政下の奄美大島で撮影した写真約120点が並ぶ写真展=23日、奄美市名瀬

よって解説。来場者は「すごく鮮明」「感慨深い」と感動した。

 

ハーリング氏は1951~52年、米軍政下の奄美大島で人類学的調査を行い、島民の暮らしを撮影した。今回の講演会と写真展は同氏が残した写真や映像を奄美で共有、伝承するプロジェクトの一環で、鹿大と英国オックスフォード大学の有志研究者らが企画した。

 

講演会は同PLAZAマチナカホールであり、市内外から約200人が来場。あいさつで鹿大の佐野輝学長は「国際的な連携を通じて奄美を世界に発信していきたい」、奄美群島広域事務組合管理者の安田壮平奄美市長は「懐かしく新鮮でもある奄美の風景を感じ、次世代へつなぐ機会となれば」とそれぞれ述べた。

 

プログラムは冒頭、プロジェクトに携わる鹿大国際島嶼教育研究センター奄美分室の河合渓教授がプロジェクトの背景を説明。ハーリング氏を研究した同大の桑原季雄名誉教授は「(同氏は)奄美が文化的に沖縄より日本本土に近いと強調し、日本返還への提言に結び付けた」などと語った。

 

プロジェクトメンバーの一人で、ハーリング氏の写真や映像を日本に持ち込んだ英国オックスフォード大学オールソウルカレッジ社会人類学博士研究員、シャーロット・リントン氏は70年前に撮影された写真に考察を添えて解説。当時の風景や人々の表情を映し出し、関係者から聞いた話を伝えた上で「ハーリング氏の写真は今後、奄美の未来へどのように役立つだろうか」と聴衆に投げ掛けた。

 

同ホール外のスペース・マチナカリビングでは大小約120枚のカラー写真を展示。講演会に訪れた人々や立ち寄る市民らは「70年も前なのにすごく鮮明で驚いた」「大切にしたい原風景だと感じた」など感嘆の声を上げ、記憶と重ね合わせて思いをはせた。

 

祖父らと講演会を聞いた同市名瀬の宮原海さん(27)は「写真を通じて祖父から聞いた話を改めて実感できた。この臨場感は後世に伝えたい」と感動した様子。旅行中にこの会場を訪れたという広島県東広島市の野田邦子さん(71)は「奄美が日本復帰70周年だと最近知った。そうした事実も踏まえ改めて旅行を楽しみたい」と話した。

 

この会場での写真展は28日まで。4月ごろにかけて奄美群島各地と鹿児島市で巡回展を予定している。