地域福祉の担い手が不足 認知度アップも課題に 民生・児童委員(上)

2023年05月27日

地域

地域福祉の担い手が不足 認知度アップも課題に 民生・児童委員(上)

地域の高齢者や障がい者、ひとり親世帯など、さまざまな生活上の困り事を抱える人たちの相談に応じ、必要な支援につなぐ民生委員児童委員(以下民生委員)。そんな地域福祉の世話役が、人口減や高齢化による担い手不足に直面している。独居高齢者の増加、老々介護、DV、引きこもり、ヤングケアラー…。住民生活を取り巻く課題が複雑、多様化する中、民生委員の役割も増しており、なり手確保の対策が急務となっている。

 

■多様な役割

 

民生委員は法に基づき国から委嘱された非常勤の地方公務員。見守りが必要な高齢者や障がい者、生活困窮者らを訪ね、必要に応じて行政や福祉サービスにつなぐ役割を担う。

 

地域の児童や妊産婦、ひとり親家庭の見守りを行う児童委員の役割も兼ねるなど、活動は幅広い。無報酬のボランティアだが、交通費など活動費の名目で年間数万円が支給される。任期は3年。

 

委員の選任に当たっては75歳未満の人を選ぶよう努めることが求められているが、なり手不足で75歳以上や、活動10年以上のベテラン委員が増えているのが現状だ。

 

■増える欠員

 

厚生労働省のまとめでは2022年12月現在、国内の民生委員は定数約24万人に対して欠員が1万5千人超で過去最多。委員の高齢化、社会情勢の変化による活動負担の増加など課題は山積している。

 

奄美市民生委員児童委員協議会連合会(原田俊光会長)によると、奄美市は委員定数142人に対し、5月1日現在の実数は126人。地区別の欠員は名瀬(定数98人)15人、住用(同15人)1人、笠利(同29人)ゼロとなっている。

 

名瀬地区は22年12月の改選時は欠員が18人だったが、4月から新たに3人が加わった。平均年齢は67・2歳。定年退職者など主に「元気なシニア」が活動を支えている。

 

■不足の要因

 

原田会長によると、委員のなり手不足は人口減の影響も大きいが、要因はそれだけではないという。実際に人口が少ない笠利、住用の各地区と比べても名瀬の方が委員の欠員は多い。自治会がなかったり、あまり活動が活発でない地区での不在が目立つという。

 

中には2期(6年)以上、委員が不在の地区もある。原田会長は「ひと昔前よりも、個人の考えやプライバシーがより尊重されるようになった半面、地域の協調性が薄れ、住民同士のつながりが希薄化していることも、なり手が減っている要因かもしれない。地域の人たちと信頼関係を築くことが何より大切な民生委員にとって、活動自体も難しくなっている」と話す。

 

委員の不在は、本来なら気付けたはずの事案の見落としなど支援の網に漏れを生じさせる懸念がある。当然、行政側の負担も増えることになる。

 

■活動の周知

 

全国民生委員児童委員連合会が22年6月に公表した全国1万人対象の意識調査によると、民生委員の「役割や活動内容まで知っている」という人の割合は5・4%にとどまるなど、活動の周知不足が浮き彫りになった。

 

奄美市連合会では、民生委員活動を多くの人に知ってもらうことが、地域での活動強化や、担い手不足解消の糸口と考え、広報に力を入れている。5月は地元ラジオの番組に委員が出演し、活動をPR。奄美まつりなど各種イベントにも積極的に参加する。

 

原田会長は「『民生委員です』と自己紹介して訪ねても、最初は不審な目で見られることもある。私たちの活動を理解してもらうことがまず第一歩」と語る。担い手についても「『民生委員は大変そう』といったイメージが一人歩きしている。『大変じゃない』とは言わないが、やりがいも誇りもある。そして仲間もいる。活動を理解することで協力したいという人は、島にきっとまだまだいるはず」と力を込めた。

 

奄美市連合会の総会で「民生委員児童委員信条」を朗読する委員ら=5月12日、同市名瀬