奄美社会の変容を記録 島々の社会文化を研究 NZ在住の研究者、パポサキさん
2025年04月11日
地域

南海日日新聞の記者らにインタビューするパポサキ・エバンゲリアさん=9日、奄美市名瀬
奄美の世界自然遺産登録に伴う社会の変化や観光産業への影響などをテーマに研究する海外の研究者がいる。社会科学などが専門のパポサキ・エバンゲリアさん=ニュージーランド在住。奄美大島に15日まで滞在し、地元住民へのインタビューをはじめとする現地調査を行っている。
パポサキさんは、ギリシャのクレタ島出身。太平洋の島々で研究に取り組み、現在はニュージーランドのワイヘキ島で暮らす。奄美大島には2017年に初めて来島して以来、新型コロナウイルス禍の期間を除き毎年訪れている。
今回は、独立行政法人国際交流基金が海外の研究者を招へいする「日本研究フェローシッププログラム」に参加し来日。1~7月の約半年間、日本で研究活動を行う。奄美・沖縄に1月末から4月中旬まで約2カ月半滞在する。
奄美に関する一連の研究では、長期間かけて地域社会の変容を観察してきた。今回は特に世界自然遺産登録に伴う観光産業への影響に焦点を当てる。特定の文化や社会の様相をさまざまな方法で観察し記録する「エスノグラフィー」と呼ばれる研究手法を用いる。
例えば、名瀬市街地の風景写真を撮影して開発が進む過程を記録したり、ホテル建設計画で揺れる地域コミュニティーの動きを取材したりする。このほかさまざまな立場の人々から聞き取りも行う。日常の会話やコミュニケーションも重要な研究材料になるという。
今回の滞在中は、自然保護に関わる人々や観光従事者、行政関係者、住民などと話をしながら地域の現状を探った。9日には南海日日新聞社を訪れ、記者らにインタビュー。自然環境や観光に関連する話題をどのように扱っているか、地元メディアの報道の在り方を尋ねた。
パポサキさんは奄美での調査を振り返り「(自然遺産登録により)奄美が世界から注目されたことで、人々が改めて自分のアイデンティティーに気付き始めていると感じた。島にはコミュニティーレベルでリーダーとなる素晴しい人材がそろっている。こうした人々を活用し、官民が一体となって今後の奄美をどのように発展させていくべきか考えなくてはならない重要な時期に差し掛かっている」と分析する。
自身も島で生まれ育ち、奄美の環境に親しみを感じるというパポサキさん。クレタ島には、ギリシャ本土とは異なる文化があり、伝統音楽や方言も残っているという。「奄美は懐かしい古里を思い出させてくれる」と笑顔を見せた。
国際的な島嶼(とうしょ)研究学会に所属し、世界各地の島々の社会文化を見詰める。これまでトンガやクック諸島を研究したほか、パプアニューギニアに居住した経験も。現在暮らすニュージーランドのワイヘキ島では、日頃から先住民族であるマオリの文化にも親しんでいる。
島嶼地域に関する研究について「小さな島々は気候変動などの影響を一番最初に受けやすく、世界規模の変化を知るうえでとても重要な研究対象」と語った。
(餅田彩葉)