学校は集落の元気の源 跡地生かし活性化を 喜界町

2018年01月03日

地域

志戸桶小跡を活用し、データ入力オペレーターを育成するサテライトオフィス

志戸桶小跡を活用し、データ入力オペレーターを育成するサテライトオフィス

 2012年度に小、中学校の統廃合が行われた喜界町(喜界島)で、小学校跡地を民間に貸与して活用し、産業の創出など地域振興につなげる取り組みが進む。活用形態は新産業の創出や福祉分野の活用、地域文化の交流、宿泊、雇用確保策などさまざまだ。川島健勇町長は17年度施政方針の「共生・協働」の取り組みで、「学校は子どもを中心に集落の老若男女が集う場所。町発展のためには集落活性化は欠かせず、学校跡地は地域おこしの重要な資源」と語った。子どもの学びの場としてだけでなく、地域に元気や活力を与える拠点でもあった学校は、地域活性化への核施設に生まれ変わりつつある。跡地利用策の一部を紹介する。

 

■情報通信産業の拠点に 旧志戸桶小跡地

 

 人口流出が続く喜界町にとってU・Iターン者の確保は欠かせない。そのためにも新産業の創出は重要な課題だ。

 

 情報通信事業を展開する(株)南西テレワークセンター(本社・奄美市)は、2016年4月に旧志戸桶小の校舎跡にサテライトオフィスを開設した。

 

 高速光通信サービスを活用した取り組み。インターネット環境があれば、都会に限らず離島やへき地でも業務できる特性を生かした。

 

 旧校舎は、自宅で勤務可能なデータ入力オペレーターの育成や、定期的に行う「集合業務」の場。教室には15台の端末が並ぶ。17年11月末現在で30~70代の25人が研修を終え、13人が実務に就いた。

 

 研修生の大半は主婦などの女性で、サテライトオフィス責任者の南郷一光マネジャー(63)は「かつて、各家庭で行われていた大島紬の織り作業のイメージ。U・Iターン者の定着にも貢献できるのではないか」と語る。将来的には50人以上のオペレーター育成と確保を目指す。

 

■高齢者福祉の拠点に 旧坂嶺小

 

 坂嶺小学校の校舎跡は、町社会福祉協議会が運営する通所型の小規模多機能ホーム「十五夜」(向アキミ施設長)に生まれ変わった。

 

 学校統廃合翌年の2013年8月に開設。校舎内に宿泊室5部屋と浴室、調理場、交流ホールを設置し、自宅での生活を望む1人暮らしや認知症の高齢者が生き生きと暮らせるよう支援する。

 

 11月20日現在、66歳から97歳までの23人が通所し、他の高齢者や職員と食事やレクリエーション、体操などを通して交流を深めている。

 

 時折、坂嶺集落内外から住民や子どもたちが訪れ、交流を深めるという。向施設長は「地域全体で高齢者を支えることが目的で、互助の精神を具現化している」。地域に開かれた学校施設にふさわしい跡地利用策だ。

 

■観光の振興、伝統産業の広がりへ 旧小野津小

 

 2018年夏の実現を目指す世界自然遺産登録への動きや、奄美大島への格安航空会社(LCC)就航は、喜界町の観光にも追い風を吹かせている。課題となっているのは受け入れ施設の確保だ。

 

 小野津集落は14年度から、旧小野津小の教室を宿泊施設として活用。3室を改装して折りたたみ式のベッドを持ち込んだり畳を敷いたりしたほか、シャワー施設や調理スペースも確保した。

 

 宿泊料(1泊)は1人2千円で、1室10人まで宿泊可能。島外からの旅行者だけでなく、島内の小・中学生の宿泊研修の場としても利用されている。

 

 芝山静男区長(70)によると、学校跡の活用に当たっては地域から多くの意見が出た。「地域住民が学び育った学校を守っていくことは集落のプライドでもあり、あらゆる面で活用策を探った」と話す。

 

 同小の校舎跡は、他の個人や団体にも活用されている。

 

 同集落出身で元県職員の福山秀久さん(66)。奄美市名瀬浦上にあった旧大島紬技術指導センターでの勤務経験を生かし、郷土学習室として使用されていた教室を、17年夏から大島紬の織り工房として利用している。

 

 自身の織り作業の場としてだけでなく、「大島紬のことを幅広い年代の人々に知ってほしい」との思いから、機織り体験も実施。放課後や休日には集落内外から子どもたちが訪れ、見よう見まねで機織り体験を楽しむ。

 

 織り工房に隣接する家庭科室では、障がい者と地域住民の交流支援に取り組む「子ども支援ネットワークめばえ」(増田好明代表)が、地場産のグアバなどを使用したお茶づくりや、それらを提供するカフェ(喫茶施設)の運営を計画中だ。

 

 福山さんも「めばえ」も、学校跡の活用で老若男女が気軽に訪れる機会を設けることが目的の一つ。校舎への宿泊者を含め、多くの人々が集う場所を設けてコミュニティー醸成と地域振興につなげる取り組みは、町が掲げた学校跡地の利活用方針と合致している。

旧坂嶺小の校舎を改装した小規模多機能ホーム「十五夜」で、体操を楽しみながら交流する高齢者ら

旧坂嶺小の校舎を改装した小規模多機能ホーム「十五夜」で、体操を楽しみながら交流する高齢者ら