島尾敏雄館長の足跡ひもとく あまみならでは学舎・記念室講演会 読書広めた取り組みを紹介 県立奄美図書館

2022年11月16日

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図書館運営に尽力した島尾敏雄の足跡を解説する工藤教授=12日、奄美市名瀬の県立奄美図書館

第6回あまみならでは学舎「島尾敏雄記念室講演会」が12日、奄美市名瀬の県立奄美図書館であった。図書館情報学を専門とする別府大学文学部の工藤邦彦教授が「島尾敏雄の図書館運営」と題して講演。県立奄美図書館の前身・奄美日米文化会館の館長に就任し、同分館の館長も務めた島尾氏が、17年間かけて奄美群島に読書を広め、図書館を発展させた取り組みを紹介。「奄美分館長としての島尾」が目指したものを、書簡などの資料を基に解き明かした。

 

島尾氏の命日に毎年企画されている講演会で、今年は鹿児島県立図書館でもサテライト中継した。工藤教授は①読書推進活動②レファレンス(参考調査業務)③出版活動の3点をキーワードに「島尾氏の理想の図書館」を考察。島尾氏が▽地方奉仕として貸出文庫や読書会を整備し、読書の大衆化を図った▽奄美分館が来館者の疑問に答え、調査研究を援助する「知の拠点」となるよう努めた▽同分館報「島の根」や会誌「島にて」などの発行を通じ、住民に生涯学習コミュニティーの場をもたらした―ことなどを解説した。

 

今なお島尾氏が奄美で尊敬を集めていることについて、工藤教授は「作家や郷土史家としての知識の深さに加え、図書館運営を通じ奄美の人々に読書習慣や知的探求心を築き、社会関係資本の醸成に貢献したことにもよるのではないか」と推察し、締めくくった。

 

龍郷町から参加した60代男性は「(島尾氏の活動や人となりを知ることが)奄美の実情を知ることにつながると思い参加した。知らなかったことも聞け、参加してよかった」と話した。

 

奄美図書館では20日まで企画展を開催中(入場無料)。島尾氏の分館長時代の日記(複写)や直筆の草稿などを展示している。