戦争遺跡活用し歴史継承へ 鼎さん、奄美大島要塞跡を解説 奄美博物館で復帰70周年特別講演

2023年11月20日

地域

瀬戸内町の近代遺跡について解説した鼎丈太郎さん=19日、奄美市名瀬

奄美群島日本復帰70周年を記念した特別講演会(奄美市立奄美博物館主催)が19日、同市名瀬の川商ホール(奄美文化センター)であった。瀬戸内町教育委員会社会教育課主査(埋蔵文化財担当)の鼎丈太郎さんが講師を務め、同町に残る旧日本陸軍の「奄美大島要塞(ようさい)跡」について解説。「戦争が遠い世界の話ではないということを遺跡が教えてくれる」と語り、歴史継承や平和教育に向けた近代遺跡の活用を呼び掛けた。

 

奄美大島の戦争の歴史を考えた特別講演会=19日、奄美市名瀬

奄美大島要塞跡は瀬戸内町の奄美大島側と加計呂麻島、江仁屋離島に1921年から45年まで断続的に建設された旧陸軍の要塞跡。鼎さんらが2014年から実施している町の調査で、206カ所の軍事施設跡を有する52遺跡が確認されている。

 

鼎さんは大正初期から太平洋戦争終結までの世界情勢と国防の動きを時系列で説明。「戦争を体験した世代の高齢化で直接の伝承が難しくなる中、自らの存在で歴史を物語る近代遺跡が果たす役割がますます重要になる」と語った。

 

講演会には30人が参加。「奄美生まれでも知らないことが多い。地元住民が参加しやすい形で、近代遺跡と戦争の歴史を知る機会を増やしてほしい」「観光客にも知ってもらえるよう、自治体と研究者、観光関係者が一体となってガイド育成を進めるべきではないか」などの意見を寄せた。

 

特別講演会は計3回あり、第2弾の「戦前から戦後におけるソテツ食(仮)」は12月17日午前10時~正午。第3弾の「復帰運動と次世代への継承(仮)」は12月24日午後2時~同3時半。また、奄美博物館では来年1月7日まで復帰70周年記念企画展「朝はあけたり、1953~『語り継ぐ』次世代」を開催している。

 

講演会や企画展に関する問い合わせは電話0997(54)1210奄美博物館へ。