港や駐車場、路上で練習 公設パークに期待の声も スケボーどこでする?

2022年08月26日

地域

専用パーク「ラスティック」でスケボーを楽しむ愛好者たち=16日、龍郷町瀬留

「練習場所が足りないと競技の裾野が広がらないし、実力者も育ちにくい」-。昨夏の東京五輪で日本人選手が活躍し、競技としても人気が高いスケートボード(略称・スケボー)だが、奄美群島には専用のパーク(練習場)がほとんどない。公園や駐車場、港、路上で練習する愛好者もおり、ほかの施設利用者や地域住民とのトラブルが懸念される。そんな中、公設パーク整備に前向きな自治体の動きもあり、関係者は「スケボーは年齢を問わず競い、交流しやすい。気軽に通えるパークはにぎわいや関係づくりの場にもなる」と期待する。

 

■東京五輪機に人気上昇

 

スケボーは四つの車輪が付いた1枚の板(長さ約80センチ、幅約20センチ)に立って滑走し、乗りこなす技術を楽しむ。競技では▽街中の斜面や段差、手すりを模した構造物を使う「ストリート」▽おわん型のくぼ地を組み合わせたコースで行う「パーク」-の2種目が知られている。

 

2021年の東京五輪で初めて正式種目となり、女子ストリートで当時13歳の西矢椛選手が金メダル、女子パークで当時12歳の開心那選手が銀メダルに輝くなど、主に10代の選手らが活躍した。

 

こうした盛り上がりを背景に競技人口は増加。全国でパークや技術を学ぶ教室が増える一方、道路や公共施設で練習し、路面や施設の損壊、騒音で地域住民らとトラブルになるケースも少なくない。

 

■県全体で少ない練習場

 

「奄美にはパークがなかったので自分で造った」。龍郷町瀬留に十数年前、スケボーパーク「ラスティック」を開設したスケボー用品店「アマクマ」の恵勇輝代表は、練習環境が不足する現状から「趣味として始める中高生は増えたが、本腰を入れて取り組む人は少なく、長続きしない印象」とみる。

 

山裾にある同パークの主な利用者は車で通える社会人。料金は1日200円と安いが、アクセスの壁が高い。同パーク常連の男性(28)は「奄美市の名瀬港などでよく高校生を見掛けるが、交通量の少ない道路で練習する子もいる。10代が本気でスケボーに取り組むのは難しい」と語った。

 

県本土から同パークを訪れていた20代の利用者は「県本土でもパークは数えるほどしかない。普段は公園の一角を使うが、近隣に配慮して午後9時までしかできない。もっと技を磨きたいが」とも。「鹿児島県のスケボー環境整備はかなり遅れている」(恵代表)という。

 

■将来につながる環境を

 

ブームの一方、目的外利用のスケボー練習に困る公共施設側の事情もある。龍郷町りゅうがく館は一般利用者からの苦情もあり、隣接公園を含む敷地内でのスケボーを禁止している。玄関前のスロープなどは、滑走のため床面が一部削れている。

 

こうした状況について、昨秋の町長選でスケボーパークを含む複合施設整備を公約に掲げた竹田泰典町長は「公共施設の目的外使用は良くない」と指摘。その上で「スケボーする場所が足りないのも事実」とも話し、施設整備への考えを改めて示した。

 

東京五輪でも国籍にかかわらず、選手たちが大技への挑戦をたたえ合う光景が話題となったスケボー競技。恵代表は、公設パークの可能性を歓迎するとともに「愛好者と地域住民が、互いの立場を理解し合うことが重要」と、相互理解による地域づくりの大切さも訴えた。