3Dデータ化で活用期待 瀬戸内町の戦跡を測量 筑波大研究者ら

2023年05月31日

地域

西古見砲台跡・監守衛舎を計測する調査チーム=30日、瀬戸内町

筑波大学芸術系保存科学の松井俊也教授ら研究チームは29、30の両日、瀬戸内町にある戦跡の調査を行った。遺構や通路などを含めた一帯を測量し3D(立体)データ化するもので、調査結果は町へ提供する。町担当者は「郷土教育や平和学習、観光、建築学などさまざまな分野で活用できる貴重なデータ。将来的に一般の方にも見てもらえる形で公開できれば」と話した。

 

奄美大島と加計呂麻島に挟まれた大島海峡周辺では1921(大正10)年から40(昭和15)年にかけて、東と西の端を中心に旧日本陸軍の要塞(ようさい)が複数築かれた。瀬戸内町はそれらを戦争の記憶を伝える近代遺跡(戦争遺跡)として保存、「奄美大島要塞跡」として国史跡の正式な指定を目指している。

 

松井教授は今年3月、奈良県立橿原(かしはら)考古学研究所と共に同町西古見の西古見砲台・第2観測所跡で3D測量と遺跡内の絵図の成分分析を行った。今回は測量会社や建設会社の技術研究所、通信会社なども加わり、計6団体15人で奄美大島入り。2日間で西古見と手安地区を巡り、砲座や弾薬庫、コンクリート造の監守衛舎跡などを調査した。

 

30日は午前9時前に調査をスタート。西古見地区の監守衛舎周辺の下草を払い、特殊なレーザースキャナーを用いて建物を測量した。今回の調査では、西古見砲台跡の第2観測所から第1、第2砲側庫、沈殿池、井戸、第1~第3砲座、砲台弾薬庫、監守衛舎と周辺のコンクリート建造物までの通路を含めた延長約2キロにわたる一帯が丸ごとデータ化され、正確でより直感的に分かりやすい3Dモデルが構築された。

 

松井教授は「遺構一帯のデータ化によって今後さまざまな分野、角度から研究が進み、新たな発見につながると期待している。町と一緒に活用を考えていければ」と語った。午後には同町手安の弾薬本庫跡でも同様の調査を行った。