世界遺産の価値維持へ 財源創設検討委が初会合 奄美市

2023年08月17日

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世界自然遺産登録に関する新たな財源確保に向け設立された奄美市の「財源創設検討委員会」=16日、奄美市役所

世界自然遺産の価値を維持するために必要な財源の確保について話し合う奄美市の「世界自然遺産に関する新たな財源創設検討委員会」が16日設立され、初会合が奄美市役所であった。委員長に鹿児島大学法文学部学部長・教授の松田忠大氏を選任。事務局の世界自然遺産課が他自治体の法定外税導入事例や財源の検討内容などについて説明した。年度内に計3回の会合を開いて奄美大島5市町村の連携を視野に新たな財源確保の検討を進め、年度末をめどに報告書を作成して市へ答申する。

同委員会は環境、文化の保全や世界自然遺産登録で増加が見込まれる観光客らに対応するためのインフラ整備、行政サービスの拡充などに恒久的に対応できる財源確保を検討するため、市の諮問機関として設置した。地元事業者や有識者、行政担当者ら9人を委員に委嘱。松田委員長は「皆さんの専門的な知見をいただき、より良い財源確保ができれば」とあいさつした。

新たな財源は法定外税、協力金などが想定されることから、会議では事務局が環境協力税や宿泊税など、全国各地の自治体で導入している法定外税の事例を説明。奄美大島、徳之島とともに世界自然遺産に登録された西表島がある沖縄県竹富町の事例として、利用者負担の仕組み構築に向けて導入予定の「竹富町訪問税」に関する報告書も情報共有した。

あまみ大島観光物産連盟は2022年度に実施した環境文化協力金実証事業について報告した。来訪者への事前アンケートでは協力金を容認する意見が8割を占めたが、実際の協力金徴収額は2万4900円と想定額(39万円)を大きく下回る結果となったことについて「寄付が可能なキャッシュレス決済方法が限られた側面もあるが、環境保全に協力したいという思いがあっても寄付行為に至らなかった」と説明した。

委員からは「協力金はお願いベースとなる。税での徴収が望ましい」「税の公平性を確保するには、制度の周知や徴収方法など細かな制度設計が必要」「奄美大島4町村との連携は」「島民には負担減免を」などの意見があった。

次回会合は11月20日。世界自然遺産登録で増加が見込まれる行政サービスを整理し、新たな財源想定や徴収方法、課税額などの論点を踏まえた答申案について協議する。