犠牲者追悼し、防災誓う サイレン吹鳴、企画展も 奄美豪雨から13年

2023年10月21日

社会・経済 

奄美市全域に響いたサイレン吹鳴と同時に黙とうをささげる市職員=20日午後、奄美市住用総合支所

2010年10月の奄美豪雨は20日、主な被害発生から13年が経過した。広い範囲で住家の浸水や損壊、土砂崩れなどが相次ぎ、3人が犠牲となった災害。高齢者2人が亡くなった奄美市では、防災行政無線でサイレンを鳴らして犠牲者を追悼し、市内3地区各会場で当時の記録や記憶を伝えるパネル展を始めた。災害の脅威や備える大切さを再確認し、防災意識を高めた。

 

奄美豪雨は10年10月18~21日に発生。1時間の雨量が100ミリを超えるなど「100年に1度」と表現される記録的な大雨を観測した。奄美大島では住家453棟が全半壊、967棟が浸水し、土砂災害も多発。幹線道路の通行止めや停電、断水、各種通信不能など影響が拡大した。奄美市と龍郷町で高齢者3人が亡くなった。

 

これ以降、島内各自治体は関係機関と連携し、河川の改修や傾斜地での砂防施設整備、通信手段確保などハード整備による防災・減災対策を強化。集落単位の自主防災組織結成やハザードマップを活用した意識啓発など、自助・共助を含むソフト対策も推進している。

 

犠牲者追悼を目的とした奄美市のサイレン吹鳴は20日、当時、被害が拡大した時間帯に合わせて午後2時に実施。名瀬、笠利、住用各総合支所では職員が黙とうをささげ、悲劇を繰り返さない防災を誓った。

 

市住用総合支所では、犠牲者が出たグループホームに向かって職員らが1分間の黙とうをささげた。

 

災害発生時に同支所で勤務中だった久保田貴美人地域総務課長補佐(53)は「道路が冠水した後、あっという間に集落も浸水した。周辺の家々を回って避難を呼び掛けたのを覚えている」と振り返り、「災害はいつ起こるか分からない。日頃からの備えや自助・共助の意識を高めることが大事」と語った。

奄美豪雨の記録や記憶を伝えるパネル展=20日午前、奄美市名瀬総合支所

 

災害の記憶継承や防災意識向上を図るパネル展も同日、名瀬、笠利各総合支所と住用町の観光施設「黒潮の森マングローブパーク」で始まった。26日まで。当時の気象状況や被害の詳細、現場の写真、各地で進む防災対策の現状を記録した18枚のパネルが並ぶ。

 

名瀬総合支所3階にパネルを設置した市総務課の龍和隆防災防犯対策監は「職員を含め多くの人が思い出し、考えを深めるきっかけとなれば」と願った。