陸自配備、あす5年 日米合同訓練は恒常化 奄美大島 港湾施設も整備へ

2024年03月25日

社会・経済 

一般公開もあり、多くの住民が見学した陸自奄美駐屯地、瀬戸内分屯地の開設5周年記念式典=2月25日、奄美市名瀬の奄美駐屯地

陸上自衛隊奄美駐屯地(奄美市名瀬大熊)と瀬戸内分屯地(瀬戸内町節子)が26日、開設から5年を迎える。開設後も隊員数は増加し、火薬庫などの施設拡充や、自衛隊の港湾施設新設に向けた島内調査も進行している。日米共同訓練は群島各地で行われ、5年間で計8回と恒常化した。今年4月、奄美警備隊の担当域は奄美大島、喜界島の2島から群島全域へ拡大。国が掲げる「南西シフト」の方針のもと、自衛隊機能強化の波は広がり続ける。

 

2019年3月開設時の隊員数は奄美駐屯地約350人、瀬戸内分屯地約210人。開設後は電子戦部隊、業務隊が追加配備され、約70人を増員。24年2月末の隊員数は奄美駐屯地が約420人、瀬戸内分屯地が約210人となった。

 

施設整備は継続し、5棟の計画で始まった瀬戸内分屯地の火薬庫は2棟が完成。残る3棟の工事も続く。防衛省は今後さらに増設し、計8棟とする方針を示した。

 

19年9月には、群島初の日米合同訓練が奄美大島であった。合同訓練は23年以降、喜界島、徳之島、沖永良部島でも実施され、19年度と21年度が各1回、22年度と23年度が各3回と回数も増加。自衛隊施設以外の公・私有地での訓練も多く、生活への影響を懸念する一部住民からは反対の声もある。

 

一方で自治体との防災訓練や協定締結など、地域との連携も強化。23年6月に奄美大島で発生した大雨災害では奄美警備隊初の災害派遣活動があった。各地の伝統行事にも参加し「自衛隊員の協力は欠かせない」との声も聞かれる。さまざまな配備効果の期待から、他の自治体にも誘致の動きが広がっている。

 

国は海洋進出の動きを強める中国を念頭に南西地域の配備を強化し、有事が迫った際は全国から隊員や物資を送る計画を進める。既存の空港や港湾を拡張し、自衛隊と共用する「特定重要拠点」(仮称)候補地には奄美大島の名瀬港、徳之島の徳之島空港、沖永良部島の和泊港が上がっている。本土からの輸送強化を目的とした「海上輸送群」(仮称)新設の計画もあり、瀬戸内町須手で進む適地調査は、この輸送拠点の一部となる港湾施設建設に向けたものと見られる。

 

今年2月にあった開設5周年記念式典で、長谷川健奄美警備隊長兼奄美駐屯地司令は「国際社会は戦後最大の試練の時を迎え新たな危機の時代に突入しつつある。一国で自国の安全を守ることはできず、同盟国の米国や同志国と連携を深めることが不可欠」と述べた。

 

施設整備や部隊増強の動きが加速する中、鹿児島大学法文学部の平井一臣教授(政治史、地方政治)は取材に対し「軍事的な強化を図れば、相手側も呼応し軍事力を強化する。そうした動きが繰り返され、互いに軍事力を高め合う動きがエスカレートする危険がある」と語った。