「方言継承、自分事として」 竿さん(知名町)親子、国際学会で発表 タイ・バンコク

2023年10月31日

社会・経済 

国際学会で家族の取り組みを発表する(右から)竿智之さん、りりさん親子=4日、タイ・バンコク(提供写真)

【沖永良部総局】言語と教育に関する国際学会が4~6日、タイ・バンコクであり、知名町の竿智之さん(45)と長女・りりさん(14)=知名中3年=親子が「OUR FSR」と題して研究発表。家族で取り組むビーチクリーンや方言継承などの活動から、持続可能で心豊かな暮らし方を提案した。

 

少数民族や先住民を含むアジア太平洋地域のさまざまなコミュニティーの子どもたちが平等に教育を受けられるよう、教育システムを模索する国際学会で7回目。国連教育科学文化機関(ユネスコ)のアジア太平洋多言語教育ワーキンググループ、国連児童基金(ユニセフ)、タイのマヒドン大学などが主催し、40カ国以上450人の政府関係者、国際機関職員、非営利組織職員、少数言語が話される地域の当事者、研究者などが参加した。

 

竿さん親子は▽次世代を担う若者がけん引▽異なる世代のコミュニティーで協働▽現地語や各地域の文化、伝統の継承を通して、気候変動やSDGs(持続可能な開発目標)に取り組む-当事者が発表するパートに招かれた。

 

FSRはFamily Social Responsibility(家族の社会的責任)の略で、竿さん家族が活動方針として掲げている言葉。ビーチクリーンを通した生物多様性と、シマムニ(沖永良部島方言)継承を通した文化多様性を守る活動は、家族の持続可能で心豊かな暮らしに必要な要素とし、自分事として取り組む大切さを訴えた。

 

このほか、地域、町で取り組むシマムニ継承やSDGsに向けた活動などを紹介した。

初の国際学会参加を振り返り、りりさんは「宿題で始めたビーチクリーンや方言継承活動のおかげで海外まで行けるんだということに驚いたが、いろんな国の人に会い、言語の問題を直接聞くことができてよかった。より意識して方言を話せるよう頑張りたいと思った」と感想。

 

智之さんは「言語教育は平和教育だという事が初めて分かった。世界には差別や弾圧を受け、自分たちの文化に誇りが持てない、基本的人権が守られていないといった人々がいる。平和、基本的人権、差別をなくすためにも言語教育は重要。世界で消滅危機言語はどんどん増えていくと思うが、課題先進地域として、沖永良部でできることはあるのではないかと家族で話している」と語った。