ありがとう、びいなす ラストクルーズで名瀬に寄港 島唄や六調で送り出す

2022年12月30日

社会・経済 

最後の出港を見送る地域住民ら。港には約3年ぶりに紙テープが舞った=29日、奄美市名瀬の観光船バース

万感の思いを込めて、汽笛が鳴る―。日本クルーズ客船(大阪)が運航する客船「ぱしふぃっくびいなす」(2万6594トン)が29日、奄美市名瀬港の観光船バースに寄港した。同社は来年1月での客船事業終了を発表しており、今回がラストクルーズ。出港イベントでは多くの関係者が心を込めた島唄や六調を贈り、同船はそれに応えるように汽笛を響かせ離岸。住民らはゆっくりと外洋へ向かう白い船体を目に焼き付けていた。

 

同船は1998年就航。国内271港、海外264港に寄港し24年間の航海距離は地球90周分に及ぶ。「ふれんどしっぷ」の愛称で親しまれてきたが、新型コロナの影響で2020年2月に運航を中止。再開後も余波を受け事業継続は困難との結論に至った。

 

松井克哉船長(51)と阪根和則ホテルマネージャー(56)は「奄美の歓迎は世界一。全国の港の手本となったと思う。処女航海から乗船し、船には『思い出をありがとう』の言葉に尽きる。お客さま最後の一人まで笑顔で見送りたい」と語った。

 

鹿児島市から見送りに訪れた坪山世名さん(20)は「14年前、出港セレモニーで祖父と島唄を歌い見送った。人生で最初に目にした客船がこの船。懐かしくて、寂しい」と運航終了を惜しんだ。