ソテツの葉枯れ広がる カイガラムシ被害が急拡大 県が市町村に対策呼び掛け 奄美大島

2022年11月17日

社会・経済 

カイガラムシ被害を受けたとみられるソテツ=16日、奄美市名瀬

植物の害虫であるカイガラムシの影響でソテツが枯れる被害が、奄美大島で広がりつつある。被害は主に奄美市の名瀬港沿いなどで見られ、龍郷町の一部地域でも確認されている。県大島支庁林務水産課は「急激な被害の拡大も懸念される」とし、奄美群島の各市町村など関係機関にも情報を発信して対策を呼び掛けている。

 

カイガラムシは植物に付着、寄生し、幹や枝、葉などの汁を吸って植物を弱らせる害虫。ソテツの葉や幹に付着すると、葉が黄白色に変色。被害が続くと枯死する可能性もあるという。

 

同課によると、以前から奄美市の名瀬佐大熊町でカイガラムシとみられるソテツの被害が確認されていたが、今年秋から急に目立つようになった。現在は、有屋町付近から長浜町付近までの県道沿いや公園、学校や事業所、民家敷地のソテツなどで被害が確認されている。

 

ソテツの害虫としてはクロマダラソテツシジミも知られているが、クロマダラソテツシジミの幼虫による食害は葉が短くなるのに対し、カイガラムシの被害は葉の原型を残したまま変色していくのが特徴。名瀬では両方の被害を受けているソテツも見られるという。

 

同課は14日、奄美群島の各市町村や、ソテツが敷地内にある事業所などに情報を提供して対策を呼び掛けた。被害を受けた葉は切り落として焼却するか、ビニール袋などに入れてごみとして出し、焼却施設などへ運ぶ際もカイガラムシの飛散を防ぐため、ビニール袋などに入れるよう求めている。葉を切った個体は、幹も含め薬剤散布が必要。

 

また、被害を受けたソテツの周辺については、寄生場所を減らすとともに、新芽の季節に早期の被害発見につなげるため、健全な個体であっても冬季の剪定(せんてい)を求めている。

同支庁建設課は10月、山羊島トンネルを挟んだ県道約0・9キロの区間で、緑化用のソテツ約40本の葉を伐採。今後も関係機関と情報共有しながら必要に応じて対応する。

島内では被害の拡大への心配も聞かれる。奄美市名瀬の内山初美さん(70)は「ソテツは奄美が食糧難の時代も島の人の食を支えてきた歴史的に見ても価値が高い植物。被害が広がれば奄美らしい景観が損なわれ、観光面での影響も大きいと思う。ぜひしっかりした対策をお願いしたい」と話した。

ソテツの葉に付着したカイガラムシ=16日、奄美市名瀬