ハージン漁獲減など議論 南九州水産海洋研究集会 奄美市で群島初開催、識者ら集う
2023年10月25日
社会・経済

スジアラをテーマに研究成果報告や意見交換が行われた南九州水産海洋研究集会=24日、奄美市名瀬
第9回南九州水産海洋研究集会(水産海洋学会など主催)が24日、奄美市名瀬のアマホームPLAZA(市民交流センター)であった。奄美群島での開催は初めて。南西諸島を含む亜熱帯海域に生息する魚種・スジアラ(ハージン)をテーマに漁獲動向や研究成果を報告し、意見交換。奄美海域の漁獲量減少や生息域の北方拡大などについて、各分野の専門的な見地から背景を分析、議論した。
水産資源の生態や動向に関する知見を共有し、漁業や行政施策、調査研究の在り方を探ることが目的。初の奄美開催に当たり、同学会の木村伸吾会長は「奄美には水産業発展の可能性を感じる。楽しみながら知識を増やす機会となれば」と述べた。
同日は群島内外から研究者や漁業関係者、行政担当者ら約40人が参加。スジアラの基礎生態や資源管理、鹿児島・沖縄各県海域の漁獲動向、生息域の北方への拡大といった現状のほか、より専門性の高い生物学的なデータに関する研究報告もあり、議論を深めた。
鹿児島県内のスジアラ漁獲動向について、県水産技術開発センターの中武凌一氏は「全体として増加しているが、奄美海域では減少傾向」と指摘。「近年の動向については、新型コロナ禍や魚価低迷、(2021年から22年にかけての)軽石漂着などとの関連性も調べる必要がある」と考察した。
スジアラの基礎生態や資源管理の現状などを報告した県大島支庁林務水産課の宍道弘敏氏は、奄美海域における漁獲量の変動について「海面水温の影響が大きいようだ。海面水温が平年より高い年の5年後にスジアラの漁獲量が少なくなっている」と見解を示した。
国立研究開発法人水産研究・教育機構水産技術研究所の中川雅弘氏は、長崎県五島列島の福江島で実施した調査を基に「スジアラを含む熱帯性ハタ科魚類の漁獲量が増えた。南方から近海に入り、繁殖したのではないか」とし、生息域拡大の可能性に言及した。