名瀬の街さまよう乗客 交通・情報発信に課題 大型クルーズ船寄港

2024年03月20日

社会・経済 

クルーズ船の乗客たちが行き交う名瀬中央通りアーケード=18日、奄美市名瀬

大型クルーズ船「ノルウェージャン・ジュエル」(9万3502㌧、バハマ船籍)が奄美市の名瀬観光船バースに寄港した18日、名瀬市街地は観光を楽しむ多国籍の人々の姿であふれた。乗客たちはのどかな街並みに好印象を抱きつつ、「タクシーがもっとあれば」「店が閉まっている」「奄美のことを全く知らなかった」など、交通の不便さや情報不足を訴える声も上がった。

 

同船は2023年10月に続き2回目の寄港。今回は欧米豪を中心に約2400人の乗客が来島した。入港後、約350人が島内北部や南部を巡るバスツアーに参加し、そのほかは名瀬市街地を自由に散策した。

 

観光バースから市街地までは約1・5㌔。路線バスやタクシーを利用する人もいたが台数が少なく、多くの乗客たちは徒歩で移動。名瀬中央通りアーケードでは、疲れた様子で店先の階段やベンチに座り込む高齢の乗客の姿も見られた。

 

親戚と乗船した米カリフォルニア州の女性は「(港から)20分くらい歩いた。私は大丈夫だが、船には高齢者もたくさん乗っている。シャトルバスがあるといいのに」と希望。

 

通訳スタッフを務めた中村保さん(73)は「行きたい目的地について乗客から聞かれても、交通手段がなく『行けないよ』と伝えるしかなく困っている」と話した。

 

クルーズ船の受け入れ業務は奄美市と県大島支庁、あまみ大島観光物産連盟が行っており、主に地元事業者への情報周知や通訳スタッフの確保、港でのセレモニーや物産イベントの開催などを担う。

 

一方、バスツアーやシャトルバスは船側が直接バス会社とやり取りして手配するという。市紬観光課によると、23年度は同日までに計17回クルーズ船が寄港したが、このうちシャトルバスを運行したのは6回ほどだった。

 

「奄美」の認知度の低さや情報不足も課題だ。イギリス人の男性に島の印象を尋ねると、しばらく考えた後「ジャパン(日本)」と一言。男性の妻は「奄美に関する情報が足りない。事前に知る機会があればよかった」と話した。

 

オーストラリアから訪れた女性は「自然がきれい。地元のツアーがあることを知っていれば参加したかった」、米カリフォルニア州の男性は「店のシャッターが閉まっている場所が多くて残念」と感想。

 

通訳スタッフの迫田寿恵さん(72)は「島唄や大島紬の着付けなど、乗客たちがもっと気軽に奄美の文化を体験できるようなおもてなしができたら良いのでは」と提案した。

 

市紬観光課の担当者は「2次交通が一番の課題だが、地域住民の生活路線も運行する必要があり、乗客の足の確保は厳しい部分がある。奄美を対外的にアピールする機会も少ない」とし、現状を踏まえて「今後は受け入れ能力に合った規模のクルーズ船を誘致する選択も大事になってくると思う」と語った。