奄美の〝訓練地化〟顕著 自衛隊施設外も積極活用 相次ぐ日米軍事演習

2023年02月03日

社会・経済 

陸自水陸機動団による上陸訓練後、装備品展示に詰め掛ける住民ら=2022年11月18日、徳之島町

米国本土で行われてきた陸上自衛隊と米海兵隊による日米共同訓練「アイアン・フィスト」が2~3月、徳之島や喜界島、沖縄、九州本土などで実施される。日本国内での実施は初めてで、奄美群島での日米軍事演習は、奄美大島に陸自が配備された2019年以降5回目となる。うち3回が22年度内となり、ここに来て奄美での共同訓練の頻度は増加。自衛隊施設外を活用するケースも多く、奄美の〝訓練地化〟が著しい。

 

昨年8~9月、奄美を含む九州の陸自施設などで行われた陸自と米陸軍による日米共同訓練「オリエント・シールド」。奄美大島では対艦戦闘訓練があり、陸自奄美駐屯地・瀬戸内分屯地で日米のミサイル装備を展開。駐屯地外の高台にも陸自レーダーを置いた。

 

奄美初展開の米陸軍の高機動ロケット砲システム「ハイマース」は、ロシアの軍事侵攻を受けるウクライナでも使用されている兵器。発射装置を車両に搭載し移動と射撃を円滑に行う。訓練では陸自の12式地対艦誘導弾と同時展開し、高い機動力を見せた。

 

併せて陸海空に宇宙、サイバー、電子戦を含めた複合能力を持つ米陸軍の多領域作戦部隊「第1マルチ・ドメイン・タスクフォース(MDTF)」が奄美入り。陸自の電子戦部隊と連携し、電磁波を使い敵の攻撃を妨害する戦略を共有した。

 

同年11月には、自衛隊と米軍の日米共同統合演習「キーン・ソード」が南西諸島と周辺海域を中心に行われ、自衛隊施設のない徳之島が初めて訓練地に組み込まれた。艦艇や航空機で海空から機動部隊が着上陸。離島侵攻に対する防衛、奪還の戦線を再現した。

 

徳之島町の花徳浜では陸自水陸機動団が上陸作戦を行い、沖合の日米艦艇から水陸両用車などを展開。攻撃ヘリが周辺を飛び交い、沿岸陸地では陸自が別の指揮系統で上陸阻止を図る戦車を複数配置した。内陸部では日米の輸送機オスプレイが離着陸を繰り返した。

 

上陸訓練は公開され、島民ら数百人が見物。住民の様子から、現場の陸自関係者は「自衛隊への住民の反応は(おおむね)良好」と公開に手応えを感じていた。

 

地元では「国際情勢的に自衛隊の対処力向上は不可欠」「民間地の軍事利用に慣らされてはいけない」などと、賛否両面の声が聞かれた。ただ、賛成派からは「訓練が(他国の軍事活動に対する)抑止力で済むことを願う」、慎重派からは「物騒だと思う半面、頼もしくも感じる」との声もあり、住民の思いは複雑だ。

 

南西諸島での訓練強化は、軍事的圧力を強める中国へのけん制が色濃い。陸自は「特定の国は指していない」とした上で「力による現状変更を強く懸念している。(南西諸島は)重要な前線となる地域」と説明。共同訓練のたびに米側と会見を開き、戦略的連携と対処力向上を強調してきた。

 

2~3月の「アイアン・フィスト」で陸自は水陸機動団による上陸訓練を再び徳之島で行い、初めて日米軍事演習に組み込まれた喜界島では第1空挺団によるパラシュート降下を予定。米側の動きについては「詳細を確認、調整中」としている。

 

奄美群島での日米の軍事動向を、引き続き注視することが必要だ。