復帰の歴史、演劇で表現 「私たちの望むものは」 3月12日、瀬戸内町で上演

2023年02月26日

社会・経済 

本番まで約1カ月となり、練習でも熱演をみせる演者たち=16日、瀬戸内町古仁屋

復帰の歴史を振り返り、平和の大切さを語り継ぐ─。奄美群島の日本復帰70周年を記念した演劇「私たちの望むものは」が3月12日、瀬戸内町古仁屋のきゅら島交流館で上演される。脚本・演出を手掛けたのは奄美市名瀬出身の映画監督、富岡忠文さん(65)。劇中では米軍統治下の奄美の暮らしや、日本復帰を目指して立ち上がった島人の不屈の精神を描く。演じるのは小学2年生から60代までの町民26人。世代を超えて団結し、本番に向けて稽古に励んでいる。富岡さんは「(劇を通して)争いのない世の中で生きたいという思いを伝えられたら」と語った。

 

劇は瀬戸内町教育委員会が2022年度から始めた総合芸術教室「せとうちシアター塾」事業の一環。演劇を通して、参加者に自主性やコミュニケーション力、表現力などを身に付けてもらうことを目的としている。昨年7月に参加者を募集し、11月から練習を開始。主要な役を演じる多くは小、中学生の子どもたちだ。

 

劇は現代の瀬戸内町に暮らす子どもたちが、戦争や行政分離で揺れ動いた奄美の過去に触れ、無血の復帰を成し遂げた先人たちの努力や島の誇りを見詰め直す物語。現代と過去の場面が交互に切り替わる演出で、時代に翻弄(ほんろう)された奄美の人々の苦労や願いを表現する。

 

稽古は週5回ほど。声出しやストレッチで体をほぐした後は各場面ごとの通し練習があり、富岡さんが演者の動きや台詞の言い回し、顔の表情など一つ一つに細かくチェックを入れていく。本番が約1カ月先に迫った16日、演者たちは練習で積み上げたことを意識しながら、情緒豊かにそれぞれの役を演じていた。

 

現代の小学5年生の少女、加那を演じる新山かりんさん(伊子茂中2年)は「違う人になれるので演技は楽しい。稽古では初めて経験することがたくさんあり学ぶことが多い」と話し、「劇を見た人に奄美の歴史を知ってもらい、考えてもらいたい」と力を込めた。

 

町教委の下八尻孝二指導主事(43)は「子どもたちに表現の大切さを伝えたい」と劇に参加。「実際に演じてみると難しいが、奄美の日本復帰について学校で教えるきっかけにもなる。当日は精一杯演じたい」と意気込んだ。

 

富岡さんは「最初に比べると演者たちはどんどん声が出るようになっている。本番までこのまま一緒に(舞台を)つくっていきたい」と話した。

当日は午後2時半開場、同3時開演。入場無料。観覧希望者には整理券を配布するため、電話での申し込みが必要。定員は100人。

 

申込・問い合わせ先は電話0997(72)2905せとうちシアター塾事務局。