持続可能な地域づくりへ 農村計画学会シンポジウム TAMASUが事例発表 大和村

2025年04月22日

社会・経済 

地域資源を共同管理する仕組み「ローカルコモンズ」をテーマに現地報告などがあった農村計画学会年次シンポジウム=19日、大和村

地域資源を住民で共同管理する仕組み「ローカルコモンズ」をテーマとした「農村計画学会2025年度年次シンポジウム」が19日、大和村の国直公民館であった。秋田県と山口県をオンラインで結び、一般視聴者213人も聴講。基調講演や全国3地域の現地報告、パネルディスカッションがあり、参加者は地域資源を共同管理する課題や可能性を共有した。

 

同学会は1982年に発足。毎年2回、シンポジウムなどの大会を開いて学術研究発表やパネルディスカッションなどを実施しているほか、調査やセミナーなど多様な活動を展開している。今回は集落(シマ)を中心としたコミュニティー活動が根付いた地域が数多く残る奄美大島でシンポジウムを開催した。

 

基調講演で、一般社団法人「持続可能な地域社会総合研究所」の藤山浩所長は、農村社会において▽世帯規模の縮小▽企業の撤退▽コミュニティーの小規模化・高齢化│が進行しているとし、「日常の暮らしが持続せず、世代を超えた継承の危機を迎え、小規模地域では施設や組織の存立が困難になっている」と指摘。

 

解決策として、公共施設や直売所、飲食、交通など地域を支える複合機能を集約した「小さな拠点」づくりを提唱。「それぞれの地域が小さな拠点を軸に共通する促進・阻害要因を活動に反映し、相互に学び合って進化していくことが、循環型社会へ転換するカギになる」と訴えた。

 

現地報告は下岩川地域づくり協議会の赤川秀悦副会長(秋田県三種町)、NPO法人ほほえみの郷トイトイの高田新一郎事務局長(山口県山口市)、NPO法人TAMASUの中村修代表(大和村)が発表した。

 

中村代表は景観など環境資源を活用した体験観光や集落内のローカルルール作りについて報告。「ルール作りは集落の問題について話し合い、将来像を共有するプロセスになった。観光は持続可能な地域づくりを達成する手段。島を離れた若者が帰ってきて、高齢者がいつまでも笑い合って暮らしていける地域づくりをしていきたい」と話した。

 

パネルディスカッションは現地報告した3氏と大学教授ら専門家3人の計6人が、ローカルコモンズの成果や課題、共同管理を継続する上で必要な組織の進化について意見を交わした。登壇者からは成果として「地域ブランドの向上」「次世代を担う若い世代の変化」、課題では「意識の統一」「人口減少」などが挙がり、今後必要な進化では「自分事として考える」「ゴール(将来像)の共有」などの意見があった。