日米の戦略的連携を強調 米太平洋陸軍司令官来島 奄美大島

2022年09月09日

社会・経済 

共同記者会見を行った米陸軍のフリン司令官(右から2人目)と吉田陸幕長(同5人目)=8日、奄美駐屯地

米太平洋陸軍のチャールズ・A・フリン司令官と吉田圭秀陸上幕僚長が8日、日米共同訓練「オリエント・シールド(東洋の盾)」の対艦戦闘訓練が実施された奄美大島を訪れ、陸上自衛隊奄美駐屯地などを視察した。現地で共同記者会見も行い、フリン司令官、吉田陸幕長ともに「南西諸島をめぐる情勢は極めて厳しい」との認識を示し、日米の戦略的連携深化を強調した。

 

陸幕広報室によると、米太平洋陸軍司令官の奄美大島訪問は初めて。来日に伴う部隊訪問として、地政学的に重要性が高まっている南西諸島の主要島である奄美大島を訪れた。9日は防衛大臣を表敬訪問する。

 

フリン司令官と吉田陸幕長らは8日、空自輸送機C―130で奄美大島入り。陸自輸送ヘリCH―47で上空から陸自瀬戸内分屯地や名瀬港など島内各地を視察した後、奄美駐屯地で各種装備展開を視察した。

 

奄美大島では先月28日以降、主に奄美駐屯地でオリエント・シールドの対艦戦闘訓練が行われた。米陸軍の高機動ロケット砲システム「ハイマース」と「第1マルチ・ドメイン・タスク・フォース(MDTF)」の電子戦部隊を初めて展開し、現地の12式地対艦誘導弾部隊(12SSM)などと合同作戦を実施した。

 

8日の共同記者会見では、フリン司令官と吉田陸幕長がオリエント・シールドの成果や今後の展望、近年の国際情勢などに言及した。

 

米陸軍ハイマースと陸自12SSMの展開訓練に加え、日米の電子戦部隊による情報戦略を交えた「領域横断作戦」を実践した訓練内容について、フリン司令官は「非常に複雑な訓練を実現し、総合運用性の向上につながった」と語った。

 

吉田陸幕長もサイバー空間を含めた合同作戦を実践した意義に触れ「日米の連携による対処能力向上につながる」と強調。フリン司令官と視察に訪れたことについても「訓練の成果を現地で確認できた。日米トップ間の信頼関係強化も成果の一つ」とした。

 

さらに東シナ海などで活動を活発化する中国を念頭に、吉田陸幕長は「力による現状変更を強く懸念している」との認識を示した。フリン司令官は「各地の訓練で(日米を含む複数国の)団結と集団的決意を示している」とし、中国をけん制する意図をのぞかせた。