盛郷重廣の功績に焦点 泉芳朗と連携、復帰に貢献 伊仙町で復帰記念祭開催

2023年12月25日

社会・経済 

日本復帰記念祭で朗読劇を演じる阿権小児童=24日、伊仙町ほーらい館

奄美群島の日本復帰70周年を記念した「日本復帰記念祭」(同実行委員会主催)が24日、伊仙町のほーらい館であった。復帰運動のリーダー、泉芳朗(同町面縄出身)とともに復帰に貢献したもう一人の町出身者として盛郷重廣(同)に焦点を当てて紹介。関係する資料から得られた新たな知見や関係者の講話から両氏について学び、無血革命と称される復帰運動を改めて振り返った。

 

盛郷重廣(1907~74年)は面縄出身の実業家。1952年、盛郷の知人が米国進駐軍政治顧問コルトン氏の通訳を務めていたことから、代表団として上京した泉とマーフィー駐日大使との会談の場を整えて復帰への道筋をつけたとされる。会談のメモや泉からの書簡など貴重な資料を残している。

 

講話した武居月子さん

記念祭のために来島した盛郷の次女の武居月子さん(87)=東京都=は盛郷が残した資料を同町歴史民俗資料館へ寄贈した経緯などを説明し、父親の人物像も紹介。「復帰当時、私は高校生。島の人と会った時の父のうれしそうな顔を覚えている。死後半世紀を経て、再び島の皆さんの心に留めてもらえて父の人生は報われたと感じている」と感謝した。

 

記念祭では泉のおいで、著書「泉芳朗の歩んだ道」をまとめた泉宏比古さん(65)=神奈川県=も登壇。父の宏尚さんから聞いた泉の人物像を▽普段は静かだが客が来ると冗舌▽酒が入ると島唄を披露▽兵隊ぎらい―などと紹介した。

 

講話した泉宏比古さん

さらに泉が当時最先端の大正デモクラシーや詩に強く影響を受け、名瀬市長時代にも酒を交えて多くの人と交流していたことを伝え、「かなり流行に敏感で社交的。今で言う〝パリピ〟だったのでは」と私見も述べた。

 

記念祭は上面縄の郷土芸能「上面縄ションマイカ」で開幕。実行委員長の大久保明町長は開会のあいさつで「各地で戦争が起き、未来が見えない現在こそ復帰運動について学ぶ時。歴史を見詰め直し、未来を考える機会にしてほしい」と述べた。

 

コルトン氏邸宅前で撮影された写真。中央が泉芳朗、右端が盛郷重廣(伊仙町歴史民俗資料館提供)

約300人が来場。阿権小の児童らによる泉芳朗の詩の朗読劇「旗を振る」や町内小中学生の演劇「英雄たちの生まれた町」が上演されたほか、町制作のDVD「泉芳朗の情熱が起こした奇跡」の上映もあり、泉と盛郷の功績を映像で分かりやすく紹介した。

 

朗読劇に出演した本田奏音さん(阿権小6年)は「島口のせりふが多くて大変だったけど泉芳朗先生の功績を知る機会になり、劇を通じて多くの人に泉先生の功績を伝えることができた。復帰について学んだ経験を未来の平和につなげていきたい」と話した。