環境開発か保全か 枝手久の歴史 後世へ 宇検村、復帰70年企画

2023年12月25日

社会・経済 

宇検村の魅力について語り合うパネリスト=24日、宇検村湯湾の元気の出る館

宇検村は24日、生涯学習センター「元気が出る館」で奄美群島の日本復帰70周年の記念イベント「湯湾岳と焼内湾が育む私たちの暮らしよ永遠に!」を開催した。復帰70周年の節目に村の歴史や価値を見詰め直すのが目的で、1970年代の枝手久闘争を振り返り、歴史として伝えていく大切さを再確認。約200人の来場者は、先人たちの営みに思いをはせ、暮らしの価値を後世に残そうと決意を新たにした。

 

枝手久闘争は、1970年代に東亜燃料工業が同村の枝手久島周辺に巨大な製油所の建設を計画したことに端を発した住民闘争で、誘致派と反対派で村を二分。激しい闘争は約10年続き、結果的に計画は断念された。

 

同社が村に寄付した3億円の活用策として、村は財団法人宇検村振興育英財団を設立。学業支援の他、村の歴史を次世代に伝えるべく出版事業に取り組んだ。

 

今回のイベントは、同財団が村の風景写真や歴史を収めた「北緯28度の森」(92年)、「與湾大親」(同)、「ウムイ」(93年)、「なぎ物語」(94年)の製作に携わった関係者に、当時の思いを聞こうと企画された。

 

パネリストは元山三郎さん(元宇検村長)、元田信有さん(同)、浜田康作さん(写真家)、村松健さん(音楽家)、川渕哲二さん(村文化財保護審議委員会会長)、松井輝美さん(元南海日日新聞社編集局長)で、インターネット中継で元田検中教諭の先田光演さんも参加した。

 

元山さんは「歴史には良い事も悪い事もある。歴史を『つくる』のではなく、起きたことを後世に残すことが歴史だ」と冊子の意義を強調した。

 

先田さんは「時期、場所、人が融合してできた出版物」と当時を振り返り、元田さんは「子どもたちにどのように地域のことを教えるかということが大きな目的だった」と語った。

 

浜田さんは写真を使って宇検村固有の動植物の魅力を来場者と共有。松井さんは緩やかな時間が流れる生活の素晴らしさを紹介し、村松さんは「いろんな形が変わることを容認しながら、心の中の変わらないものを意識することが大切」と指摘した。川渕さんは宇検集落内の「39の宝物」に着目した背景を紹介した。

 

元山公知村長は「先輩方の熱い思いを次へつなげる第一歩としたい」と総括。参加した宇検村平田の益英勝さん(78)は「時代を経て人は変わっても心は変わらない大切さに気付かされた。若い世代にも伝わっていってほしい」と話した。