経産牛をブランド肉に 再肥育で商品化、全国へ 与論島

2022年11月04日

社会・経済 

出荷前、感謝を込めて経産牛と記念写真を撮る農家=与論町(提供写真)

与論町のヨロンアイランドビーフ事業所(沖隆寿代表)とヨロン島観光協会(山下哲博会長)はこのほど、牛肉ブランド「ヨロンアイランドビーフ」を立ち上げた。繁殖農家で役目を終えた母牛を再肥育。精肉加工して商品化したもので、 関係者は「与論の特産品の一つとして流通させたい」と意気込んでいる。

 

与論島は畜産業が盛んで、子牛を育てて島外へ出荷する繁殖経営が中心。同事業所によると、出荷される子牛の血統や肉質は全国的に評価が高く、うち9割が「鹿児島黒牛」「松阪牛」などブランド牛の素牛となっている。一方、その子牛を産んで役目を終えた母牛は、これまで価値が低いと認識され、島外に安価で買われていた。

 

「島で育つ牛のおいしさを日本中の人に知ってもらいたい」と、島の農家と沖代表(39)が話し合いを重ね、2021年6月に同ブランドを新設した。同事業所が島内の畜産農家から経産牛を買い取り約6カ月間再肥育。沖縄の工場で精肉加工して販売する流れ。島の特産品としてブランド化することで持続可能な産業の確立を目指すとしている。

 

あまみ農業協同組合与論事業本部、町商工会、全国与論会が協力。22年にはインターネットを通じて不特定多数の人から寄付を募るクラウドファンディングを行い、全国の個人、企業から支援を得た。事業所運営は沖代表と6人の畜産農家が中心で、23年には事業組合を設立する計画だ。

 

起業のきっかけは新型コロナウイルス感染症拡大だったという。同島でもクラスター(感染者集団)が発生し、「厳しい状況の中でも食べ物をしっかり島内で生産し、島が経済的に潤うように考えた」と沖代表。「将来的には農業を通じて島の食も暮らしも豊かになればいいと思う」と力を込めた。

 

以前から経産牛肥育に取り組み、ブランド化事業では畜産農家をまとめる原田諭さん(38)は「経産牛の肉は硬いというイメージがあったが、食べてみると軟らかくておいしく、家族や周囲にも好評だった。今後は再肥育頭数を増やし、常時肉を出せるようにしていきたい。与論の特産品の一つとして流通させていけたら」と話した。

 

ヨロンアイランドビーフの魅力を知ってもらため、10月から加工品第1弾のレトルト食品「ヨロンアイランドビーフカレー」を県内Aコープ27店舗で販売している。11月からは島内外の協力店舗でヨロンアイランドビーフを使った料理が食べられるフェアを開催する予定。