防災力強化、奄美各地で 個別計画策定、見直しも 東日本大震災12年

2023年03月11日

社会・経済 

津波警報が発令され、高台に列を成す車両=奄美市名瀬、2022年1月16日未明

東日本大震災の発生から11日で12年を迎える。奄美群島でも、2022年1月15日に南太平洋のトンガ諸島で起きた大規模噴火の影響で翌16日未明、津波警報のサイレンが鳴り響いた。深夜の〝不測の事態〟に、高台には身一つで避難する住民や車両があふれ、自治体をはじめ各関係機関の対応、課題が浮き彫りとなった。群島では今、その教訓から「自分たちの地域は自分たちで守る」という共助の考えの下、台風による高潮や地震の津波などの潮位変動に対応した自主防災組織の強化を図る取り組みが広がっている。

 

奄美市は今年1月、コロナ禍で中止していた市全域の防災訓練を3年ぶりに実施した。自治会や町内会など47団体、1876人が参加。最大8・3メートルの津波に襲われるとの想定で高台避難の訓練が行われ、「徒歩での避難が困難な高齢者の誘導方法」や「避難所のトイレ」といった課題や地域情報が共有された。

 

同市名瀬の小湊と大熊の2地区では、県地域防災アドバイザーの村野剛さんを招き、災害時の行動をまとめる「自主防災計画」策定のための会合を市事業として初めて開いた。小湊地区は、奄美看護福祉専門学校の学生50人も参加。住民との意見交換をはじめ、避難所の運営手順などを確認した。

 

宇検村は、21年度から鹿児島大学や県危機管理防災局などと連携し、潮位変動に備えた避難行動要支援者向け「個別避難計画」の策定を進めている。同村の居住域は険しい山に囲まれた平野にあり、避難場所が乏しく、家屋の大半は標高5メートル以下に立地。同大総合教育機構共通教育センターの岩船昌起教授は「正確な土地の高さは、家屋や避難経路が浸水する目安になり、安全に身を守る基準ともなる」とし、13集落で測量調査を実施した。

 

村は調査結果を踏まえ、22年5月の防災会議で村防災計画に記載する危険潮位を「1・8メートル」に改定。名瀬測候所は改定を受け、今年1月26日、同村の高潮警報基準の潮位を「2・4メートル」から「1・8メートル」、注意報を「1・5メートル」から「1・3メートル」へ改めた。

 

22年11月には、防災課題対策の事例を共有するプラットフォーム「奄美群島総合防災研究会」が立ち上がった。鹿児島大学を中心に、群島6自治体、県大島支庁、県危機管理防災局、名瀬測候所などで組織され、各自治体の防災に関する喫緊の課題を討議した。解決モデルをより広域に波及させることが目的で、奄美群島の防災力向上に期待がかかる。