青年期の菊次郎の姿写る 明治18年撮影の写真 米国ワシントンで 専門家「貴重な史料」

2023年05月09日

社会・経済 

1885年に米国ワシントンで撮影された青年期の西郷菊次郎らが写る写真。右から菊次郎、三崎亀之助(推定)、隆準、九鬼隆一、寅太郎=諌山尚子さん所蔵

【鹿児島総局】西郷隆盛と愛加那の長男として奄美大島で生まれ、京都市長などを務めた西郷菊次郎が、24歳(満年齢)だった時期の写真がこのほど見つかった。1885(明治18)年に米国ワシントンで撮影された1枚で、菊次郎と共に隆盛の子の寅太郎、おいの隆準(たかのり)ら5人が並ぶ。これまでに確認されている菊次郎の青年期の写真はほとんどなく、隆準の肖像が初めて判明した写真でもあるとして、専門家は「大変貴重な史料」と評価する。

 

菊次郎の次男隆治の孫に当たる諌山尚子さん(60)=福岡県遠賀郡=が2020年10月に自宅で見つけ、歴史研究家の原田良子さん(56)=京都市=に調査を依頼した。写真は縦16・4センチ、横10・8センチ。左下には写真館の名称とみられる「Jordan」の筆記体ロゴと、現存する住所が印字されている。

 

原田さんが史料などから写真に写る人物や撮影された年代を照合。菊次郎、寅太郎、隆準が連名で勝海舟に送った礼状に記された米国での記録などから、3人が留学のため渡米した際に撮られた写真と結論付けた。1877(明治10)年の西南戦争で右足を負傷した菊次郎は写真の右側で椅子に座り、つえを手にしている。当時、寅太郎は満19歳、隆準は満21歳。ワシントン駐在公使の九鬼隆一と、公使館員の三崎亀之助と推定される人物も一緒に写っている。

 

原田さんは今回確認した写真について、隆盛が西南戦争で賊将として亡くなった後の復権運動を受けて、菊次郎ら遺子が復権の先駆けとして公費などで海を渡ることになった史実を物語ると分析。「西南の役という最大の内乱・恩讐を乗り越えた遺児たちの姿から新しい時代の幕開けを感じられる貴重な写真である」と語った。

 

日本近世史・近代史が専門の原口泉志學館大学教授(76)は「写真は公的な性格を持ち、菊次郎が外交官として認められたことを裏付ける記念すべき1枚と言える。青年時代の姿を知ることができるという意味でも大変貴重」と述べた。

 

諌山さんは「写真はビニール袋に入れられた状態で母のタンスの中から見つかった。菊次郎の写真は祖父がいろいろと残してくれていた。奄美の皆さん、特に龍郷町の方々にはお世話になっており、今回の写真も機会があれば見ていただきたい」と話した。