オオトラツグミ86羽確認 調査続け30回「関心高まった」 奄美野鳥の会

2023年03月20日

自然・気象

鳴き声を聞いて記録する調査員=19日午前6時20分ごろ、奄美市名瀬

奄美大島だけに生息する国の天然記念物の野鳥オオトラツグミの一斉調査が19日、島を縦断する奄美中央林道などであった。島内外から118人が参加。林道を歩いて鳴き声を聞き取り、86羽の生息を確認した。NPO法人奄美野鳥の会が1994年に調査を開始してから今年で30回を数える。毎年100人以上のボランティアが集まる市民参加型の調査が続いたことに、同会の永井弓子会長(48)は「希少な野鳥がいることを知ってもらい、関心が高まった」と手応えを語った。

 

調査は奄美市名瀬から宇検村までの中央林道と支線など約45キロで実施。参加者らは2、3人ずつに分かれて、夜明け前の午前5時半から1時間、それぞれ往復4キロを歩いてオオトラツグミのさえずりに耳を澄ませた。「キュロロン」という鳴き声を確認すると、方角や時間を地図に記録した。

 

今春に県立大島高校を卒業した畠山葉生さん(18)=奄美市名瀬=は3回目の参加。「受験勉強で忙しく、久しぶりに山を歩いた。奄美の自然を感じてうれしかった」と笑顔を見せた。一緒に歩いた西田富美子さん(68)=同=は「初めて参加して、鳥の声がいっぱいでびっくりした。空気がすがすがしく、自然を満喫できた」と話した。

 

奄美大島だけに生息するオオトラツグミ

調査は奄美野鳥の会がオオトラツグミの生息状況を把握して保護につなげようと、毎年ボランティアの協力を得て繁殖期の3月を中心に行っている。

 

今年の確認数は過去最多だった昨年の108羽より22羽少なかった。永井会長は「原因ははっきりしない。気候によって繁殖期のピークがずれることもあるのでは。全体として悪い数字ではなく、増減しながら高い水準で推移してくれれば」と話した。

 

30回の節目を機に、今後は中央林道以外のエリアで行っていた調査については、規模の縮小も含めて検討している。永井会長は「個体数が増えて精査が難しくなっている。歩いて行う調査は継続したいが、新しい手法も検討する」と述べた。

 

オオトラツグミは森林開発などで生息数が減少し、環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類。93年に種の保存法に基づく国内希少種に指定され、保護されている。