環境保全と経済発展の両立へ 各分野の研究者が発表 鹿大シンポジウム

2023年10月02日

自然・気象

幅広い分野の研究者らが研究内容を発表し、意見交換したシンポジウム=1日、奄美市名瀬の鹿児島大学奄美分室

環境保全と経済発展をテーマにした公開シンポジウム「奄美群島周辺における自然環境保全とブルーエコノミー」(鹿児島大学ミッション実現戦略分プロジェクト主催)が1日、奄美市名瀬の鹿児島大学奄美分室であった。同大の教授ら8人がアマミノクロウサギの農作物被害対策や動植物のモニタリング調査状況、ビッグデータを活用した漁業振興の取り組みなど幅広い分野で発表し、地域課題解決へのヒントを探った。

 

シンポジウムは同大学の国際島嶼(しょ)研究センターと大学院理工学研究科が2022年から展開している合同プロジェクト「奄美群島を中心とした『生物と文化の多様性保全』と『地方創生』の革新的融合モデル」の一環。オンライン視聴を含め65人が参加した。

 

プログラムは2部構成。前半は生物多様性部門の4人が発表した。同大農学部の髙山耕二准教授は、国の特別天然記念物アマミノクロウサギによる農作物の食害対策について研究内容を報告。クロウサギを傷付けず畑への侵入を防ぐ金網や電気柵の設置方法を示した上で、「野生動物による食害は全国的な課題。どう共生していくか住民が考えていく必要がある」と訴えた。

 

後半は地方創生部門の研究発表があり、多種多様で広範囲的な海洋データを利用した漁業者向け情報提供システムの構築について、同大水産学部の小針統教授がプロジェクトの内容を説明。奄美の植物への地球温暖化の影響や、AI(人工知能)を活用した海洋プラスチックゴミ対策、宝島で進む再生エネルギーを活用した地域活性化の取り組みなどに関する発表もあった。

 

発表の後は全体ディスカッションがあり、発表者や来場者から「持続可能な発展を考える上で長期的なモニタリング調査が一層重要になる」「海外からの漂着ごみに関して、海流の予測技術などの向上とともに国際的な議論も進むのではないか」などの意見が出された。