仲間と植えたサガリバナ 思いつなぎ、新施設へ移植 奄美市の市民交流センター

2021年10月05日

地域

住民有志で行った植樹作業=2013年10月19日、奄美市名瀬の旧水道課前=と、サガリバナ

 5日から供用が開始された奄美市名瀬の市民交流センターの周囲に、サガリバナが植樹されている。有志の住民グループが同センター新設前に道路沿いの花壇に植樹・管理していたもので、地域の要望を受けて移植された。植樹メンバーには今年5月に死去した植物写真家・山下弘さんもいる。中心となって活動した男性は「たくさんの人の思いがこもったサガリバナ並木。これからも末永く親しまれる場所になってほしい」と願った。

 

 サガリバナは、奄美大島以南でみられる常緑小高木。夏から秋にかけて一夜限りの花を咲かせ、周囲にほのかな甘い香りを漂わせる。山下さんらが「奄美市名瀬の飲食店街・屋仁川通を奄美の在来種で彩ろう」と提唱し、賛同した有志十数人で「サガリバナロードを育てる有志の会」を結成。2013年、市から旧水道課東通りの花壇を借りて植樹した。

 

 メンバーの多くは、花壇の道路向いにある老舗の小料理屋「おかめ」に集う飲み仲間たち。小さな苗からスタートしたが、活動を知った園芸愛好家らから「早く花が見られるように」と大苗が寄贈され、奄美市名瀬の小湊と朝戸地区、龍郷町、宇検村、瀬戸内町育ちのサガリバナが並ぶ立派な並木道ができた。

 

 落ち葉の清掃や水やり、追肥などの世話もメンバーが交代で行った。店の水道から道路を横切って水をやる様子を見て、市は花壇の横に水道栓を設置。近隣住民が散歩のついでに雑草を抜いたり、種を採取して庭に植えたりと、サガリバナを中心に地域住民の交流も自然と広がっていた。

 

 旧水道課跡地に市民交流センターが新設されるにあたり、有志の会は並木の保存を要望。市も快諾し、サガリバナを活用した外観デザインが決まった。センター建設中も、開花時期には工事関係者が木をライトアップし、花の下に住民たちが集った。

 

 有志の会の男性は「たくさんの人の協力で並木道が完成した。亡くなった仲間もいるが、地元で親しまれていることを喜んでくれていると思う。今後も地域の人や観光客の憩いの場になれば」と語った。

市民交流センターの花壇に移植されたサガリバナ並木=9月26日、奄美市名瀬