奄美大島の山中にニワトリ 懸念される生態系への悪影響 「責任持ち管理を」と関係者
2025年05月15日

油井岳林道で撮影されたニワトリ=3日、瀬戸内町(浜田太さん撮影)
奄美大島の山中で、ニワトリの目撃情報が複数寄せられている。人に飼われていた個体が逃げ出したか、故意に捨てられた可能性があり、関係者は「家畜・家禽は人が責任を持ってしっかり管理して」と呼び掛けている。
写真家の浜田太さん(71)は3日正午ごろ、瀬戸内町の山中で赤茶の個体と白黒の横斑(おうはん)文様の個体の2羽のニワトリを発見。「肉食獣ではないので生態系への被害の大きさは分からないが、山の中で繁殖する可能性もある」と危惧し、南海日日新聞社へ写真を提供した。実際に、ハワイ諸島では近年野生化したニワトリが増え、問題となっている。
現場は奄美市住用町役勝と瀬戸内町篠川を結ぶ県道篠川下福線の途中にある林道油井岳線起点から、同林道を300メートルほど進んだ場所。瀬戸内町農林課の職員らが8日からニワトリの捜索を始め、13日には1羽を捕獲した。同課の春真次主査は「近くに集落も人家もないし、なんでこんなところに?」と首をかしげつつ、「残り1羽も探したい」と話した。
捕獲されたニワトリは所有者不明の遺失物という扱いになる。鹿児島中央家畜保健衛生所大島支所瀬戸内町駐在機関が保管し、警察に届け出るという。

深山トンネルの住用川出入り口近くで撮影されたニワトリ=2024年8月10日、瀬戸内町(川上秀和さん撮影)
現場から700メートルほど離れた県道篠川下福線の深山トンネルの住用側出入り口付近でも、数年前からニワトリが目撃されている。同トンネルをよく利用する奄美市名瀬の川上秀和さん(69)は「前から地域の人と『ニワトリがいるよね』という話をしていた。最近も知り合いがトンネルの近くで2羽見たと言っていた」と話した。
3年ほど前には、川上さんが管理している瀬戸内町篠川の畑に突然3~4羽のニワトリが現れたこともある。「しばらくしたらタカにやられたのか、羽や肉が散らばっていて姿が見えなくなった。1羽は体が残っていたから土に埋めてやったけど、同じことが2回あった」という。見たのはいずれも羽の白いニワトリで、浜田さんが林道内で撮影したものとは違う個体のようだ。
ニワトリやアヒルのように卵や肉を目的に人が飼養する家禽は、伝染病予防の観点から野鳥などとの接触を断つことが望ましい。奄美大島では先月、衰弱した野鳥のハヤブサ1羽から高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5亜型)の感染が確認されている。
県家畜防疫対策課の担当者は「養鶏業者さんは普通どこも管理を徹底しているが、庭先で数羽飼っているような一般の方も、鶏舎にネットを張るなどして家禽(かきん)の脱走や野鳥の侵入を防ぐ対策を」と呼び掛けた。
人の管理下から逸脱した家禽が何らかの病気を持っていた場合は、山中で野生動物へ感染させる恐れもある。環境省奄美群島国立公園管理事務所の興津絵美国立公園管理官は「家畜・家禽やペットは人の手でしっかり管理するもの。どのような経緯で起こったのかは分からないが、飼養者は不要になったから外に捨てるというような行為は絶対にしないでほしい」と話した。