自然や文化継承へ機運醸成 世界遺産1周年、記念シンポ 徳之島

2023年02月24日

世界自然遺産

基調講演した(左から)亘氏、田中氏=23日、伊仙町のほーらい館

2021年7月に実現した奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島の世界自然遺産登録1周年記念シンポジウム(鹿児島県主催)が23日、伊仙町の徳之島交流ひろば「ほーらい館」であった。島内外から約200人が来場。専門家2氏が、島の自然の価値や今後の地域振興について講演したほか、島内3小中学校の児童生徒らが地域学習、環境学習で学んだ成果を発表。島の豊かな自然と文化を後世に残していくための機運醸成を図った。

 

シンポジウムは、豊かで貴重な自然を守り、未来へつないでいくためにどのような取り組みが必要か考察する目的。伊仙町の唄者、指宿桃子さんの「朝花節」がオープニングを飾った。

 

あいさつで、塩田康一知事は「今年は奄美群島の日本復帰70周年であり、かごしま国体も開催され、来年には奄美群島振興開発特別措置法(奄振法)の期限を迎える」と節目の年であることを強調し、「県としても自治体、関係者と緊密に連携しながら環境保全、地域振興に取り組んでいく」と話した。

 

基調講演を行ったのは、国立研究開発法人森林総合研究所の亘悠哉主任研究員と、九州大学アジア・オセアニア研究教育機構の田中俊徳准教授。亘氏は昨年6月に新種として発表されたクモの一種で徳之島固有種のトクノシマカワリアシダカグモを挙げ「身近にもまだ、奄美とも沖縄とも違う多くの固有種がいると考えられる」と徳之島の自然が秘めた可能性を強調した。

 

田中氏は「世界自然遺産と徳之島の地域振興」をテーマに講演。自然環境を利用する事業者らが自主的にルールを策定し、知事が認定することで環境の保全と利用の両立を目指す「保全利用協定」が沖縄振興特別措置法に盛り込まれていることを紹介し、「奄振法でも導入を」と提言した。

 

寸劇を交えて学習の成果を発表する児童=23日、伊仙町のほーらい館

続いて、花徳小(徳之島町)、天城小(天城町)、伊仙中(伊仙町)の児童生徒が環境学習、地域学習の成果を発表。伊仙中の生徒らは山と海で実施したごみ回収の結果を示し、酒缶やたばこの吸い殻などのほか、不法投棄とみられるごみも多かったと報告。「島の自然を守るのは島に住む私たち」「ポイ捨てをしない大人になろう」などと環境保全への協力を呼び掛けた。