奄美大島いきものがたり

2024年07月05日

○「世界3大奇虫」 アマミサソリモドキ

アマミサソリモドキ

奄美大島には、「世界三大奇虫」ともいわれるアマミサソリモドキが生息している。サソリモドキ科に属するクモに近い仲間だ。立派なハサミにお尻の突起物。いかにも有毒生物といった見た目であるが、サソリのように強い毒性を持つわけではない。ただ、肛門から噴射される酢酸の臭いは強烈で、しばらくの間は、辺りに酸っぱい臭いが漂う。

至近距離で噴射された場合、火傷のような炎症が起きることもある。私の知り合いは、靴の中にいたアマミサソリモドキを踏みつけてしまい、被害に遭った。靴の中も油断できない。気性が荒いわけではないので、こちらから刺激を与えなければ、噴射される可能性は低い。

昼間は大きな石や倒木の下、斜面に掘られた巣穴に隠れている。夜になると、巣穴から出てきて活動し、小さな昆虫やヤスデを食べる。現在、八丈島に生息しているアマミサソリモドキは、奄美大島から移入された可能性が高いと考えられている。

 

○絶滅危惧種の着生植物 カシノキラン

カシノキラン

他の樹木に根を張り、そこに生育する着生植物。奄美大島でみられる着生植物は、シマオオタニワタリなどのシダの仲間や、ナゴランなどのランが知られている。特に着生ランは、サガリランやアマミカヤランのように、環境省が定めるレッドリストで最も絶滅のランクが高い絶滅危惧ⅠA類に選定されているものもある。

カシノキランは、本州(千葉県以西)から四国、琉球列島の森林内に生育している着生ランである。カシ類の樹木に着生することが多いことから、「カシノキラン」と名付けられた。環境省レッドリスト2020では、絶滅危惧Ⅱ類に選定されている。

奄美大島に在来する着生ランの中では身近な種であり、梅雨が明けて夏が始まる頃に開花する。1㌢にも満たない小さな花がところ狭しとたくさん開花している姿は、何とも愛らしい。目線の高さにいくつもの個体が着生していることもあれば、直径10㌢にも満たない細い枝先にくっついていることもある。着生ランに興味のある人は、まずカシノキランを探してみるのがよいだろう。

 

(平城達哉・奄美博物館学芸員)