奄美大島いきものがたり

2025年05月22日

ハブの主食 クマネズミ

クマネズミ

奄美大島には在来のネズミの仲間が2種分布している。ケナガネズミは奄美大島、徳之島、沖縄島北部。アマミトゲネズミは奄美大島だけに分布する希少な固有種である。

また、奄美大島にはもともと生息していなかった外来のネズミとして、クマネズミとドブネズミが生息している。ドブネズミは2003年の記録を最後に、確実な観察記録はない。一方、クマネズミは島内のあちこちに生息しており、年によって観察頻度が大きく異なる。

ハブの胃の内容物を調べた研究では、約80%がクマネズミなどの野ネズミという結果が出ており、ハブの主食であることがわかる。クマネズミがかつて島にいなかったことを考えると、ハブの食性はクマネズミが入ってきたことにより変わったといえそうだ。

クマネズミの系統は別種レベルで六つに分かれていることが知られており、日本では二つの系統の存在が知られてきた。しかし、京都大学総合博物館の本川雅治先生らの研究チームは、宮古島や与那国島から国内で初めての系統の存在を確認した。奄美大島にはどの系統のクマネズミが生息しているのか。研究の進展に注目している。

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実はブルーベリーのよう ヤドリコケモモ

ヤドリコケモモ

奄美大島のごく限られた場所だけに生育するヤドリコケモモは、常緑広葉樹林内のオキナワジイなどに着生するツツジ科の常緑低木。5月頃に開花し、やがてブルーベリーのような紫色の実をつける。根に水を貯めるための塊根をもつことも特徴である。自生する株は残りわずかともいわれており、環境省レッドリスト2020では絶滅危惧ⅠA類、さらには国内希少野生動植物種にも選定されている。

数年前、ヤドリコケモモの花を求めて、梅雨真っただ中の森を練り歩いたことがある。雨が降る中、どうにか生育地に到着したのだが、木の高いところに着生している株が多く、なかなか見つけられなかった苦い思い出がある。途中からは前述した塊根を双眼鏡でひたすら探すことで、見つけられるようになった。

生育地までの道中はほとんど人通りもない場所だったので、ハブもヒメハブも見かけた。植物を観察するようになってから昼間に山奥を歩きまわることが増えたので、ハブやハチなどの危険生物との遭遇率も高くなった。

 

 (平城達哉・奄美博物館学芸員)