ザトウクジラの集団構造解明 国内4地域で同一か 奄美、沖縄などで共同研究

2022年12月23日

個体によって異なる尾びれの特徴(沖縄美ら島財団提供)

沖縄美ら島財団(沖縄県本部町)は奄美クジラ・イルカ協会(奄美市名瀬、興克樹会長)などとの共同研究で、国内4海域に来遊するザトウクジラが、同一の集団とみられることが分かったと発表した。フィリピン海の太平洋側と東シナ海側でさらに二つの小グループに分かれる可能性があるという。11月17日付の科学誌プロスワンに論文が掲載された。

 

ザトウクジラは体長12~14㍍、体重30㌧にもなる大型のヒゲクジラ。頭部のこぶ状の突起と長い胸びれが特徴。夏場はロシアやアラスカなどの冷たい海で餌を食べ、冬季に繁殖や子育てのため、国内では奄美や沖縄などの暖かい海域へ移る。

 

尾びれの模様や形の特徴で個体を識別できることから、沖縄美ら島財団は1991年から約30年にわたって沖縄周辺海域でクジラの調査を実施。ロシアやフィリピンの周辺海域と同一の個体がいることを確認していたが、国内でクジラが来遊する海域間の関係などはよく分かっていなかった。

 

共同研究では奄美、沖縄、小笠原、北海道で89年から2020年にかけて撮影された3532頭の尾びれの写真を自動照合システムを使って判別。各海域で複数の同じ個体が確認され、共通する集団であることが分かった。

 

クジラが各海域を利用する頻度を分析したところ、小笠原からマリアナ諸島の間の太平洋側と、奄美や沖縄からフィリピンの間の東シナ海側で、二つの小グループに分かれている可能性があるという。

 

今後は北太平洋西側全体の個体数や海域間の関係などを把握するため、国内外の関係機関と共同研究を行う。

 

沖縄美ら島財団総合研究センターの小林希実主任研究員は「日本近海のザトウクジラは情報不足と個体数の少なさから絶滅が危惧されている。保全に向け大変重要な発見。各海域の団体が一体となって調査や研究に取り組む必要性が高まった」と述べた。

 

奄美では近年、ザトウクジラの来遊数が増え、ホエールウオッチングの人気も高まっている。奄美クジラ・イルカ協会の興会長は「沖縄と連携してホエールウオッチングの統一ルールづくりなどを進めている。将来的には多くの海域と一緒にクジラを見守る活動に取り組みたい」と話した。

ザトウクジラの集団構造のイメージ図