奄美大島いきものがたり

2024年02月07日

○冬に観察できるカラスバトの幼鳥

路上にたたずむカラスバトの幼鳥

国の天然記念物に指定されているカラスバト。カラスとハトが含まれたややこしい名前がつけられているが、全長40㌢ほどのハトの仲間である。

奄美大島に生息している鳥類の繁殖期は、ルリカケスやアカヒゲなどをはじめ、大半の種類は春である。リュウキュウアカショウビンなどの夏鳥やリュウキュウコノハズクは夏頃に、そしてカラスバトは秋頃から牛のような「ウッ、ウウーッ」という鳴き声を発するようになり、冬に幼鳥が観察できる。

2月の夜の林道。路上に黒い石のようなものが落ちているのを発見した。何となく生き物のような気がしながら、ゆっくり車で近づいたところ、少しだけ動いたので、生き物だと確信した。車から降りて、写真を撮影してみるとカラスバトの幼鳥だった。

生まれたての毛はまるで眉毛のように残っていて、思わずペンギンを連想してしまった。このままだと、ロードキルに遭ってしまいそうだと考え、1㍍くらいまで接近したところ、てくてくと歩き始めたため、林道脇の森林まで誘導した。

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○防風対策に利用ヤドリフカノキ

ヤドリフカノキの実

園芸植物としてはシェフレラなどと呼ばれ、台湾や中国南部が原産であるヤドリフカノキ。島内では防風対策として庭や川沿いなどに植栽されている。夏頃にクリーム色の花を咲かせ、冬から春にかけてオレンジ色の実をたくさん結実させる。茎や根、葉には薬用として用いられることもあるようだ。

冬から春にかけてヤドリフカノキの実を観察していると、さまざまな種類の野鳥が実を求めてやってくる。リュウキュウメジロやアマミヒヨドリであることが多いのだが、数年前には稀な渡り鳥であるヒレンジャクが、50羽ほどの群れを成して、ヤドリフカノキの実を食べている姿を見たことがある。

ヤドリフカノキが数百㍍おきに点在して生えている場所で、ヒレンジャクは何度も行き来しながら、実を食べていた。大きな群れがやってくるたびに、上述した他の鳥たちはヒレンジャクのいないヤドリフカノキへと移動しており、まるで鳥たちが追いかけっこをしているようにも見えた。

(平城達哉・奄美博物館学芸員)