奄美大島いきものがたり

2024年03月22日

○本土と異なる印象 ムクドリ

ムクドリ

日本本土では、夕方になると、駅の周辺や街中でムクドリの大きな群れを見かける。2年前に訪れた高知県では、1000羽を超える群れを見かけた。思わず動画を撮影してしまうほどに驚いた。地域によっては農作物被害や糞害(ふんがい)が問題となっており、害鳥扱いされている。

ただし、奄美大島では比較的珍しい渡り鳥である。島では日本本土で見られるような大きな群れは形成せず、1羽から数羽の小さな群れでいることが多い。芝生などに下りて、エサをついばんでいる姿を見かける。日本本土とは、随分と印象が異なる。島内で観察・記録されるムクドリの仲間としては、ホシムクドリ、ギンムクドリ、カラムクドリなどが挙げられ、特に春頃には大きな群れが見られることもある。

奄美大島では渡り鳥である一方、徳之島の一部地域では繁殖していることが確認されているようだ。こんなにも近い二つの島で、鳥の生態に違いが見えてくるのは面白い。

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○実と違って目立たない ゴンズイの花

ゴンズイの花

「ゴンズイ」。この名前を聞くと、どうしても魚を思い浮かべてしまうのは、私だけではないだろう。子どもの頃に釣りが好きだった私は、両親からも気を付けるようにと、よく聞かされていた魚だ。今回、紹介するゴンズイは、魚ではなく植物である。ゴンズイの名前の由来は諸説あるようだが、その中に「魚のゴンズイのように役に立たないから」というものも含まれているそうである。

ゴンズイを知っている人にとっては、熟して真っ赤に色づいた実の印象が強いだろう。林道沿いでも非常によく目立ち、弾けて黒い種子が見えることもある。奄美大島では夏から秋にかけて結実する。

花は春先の3~4月頃に見かける。実とは違って目立たず、直径5㍉ほどの淡い黄色の小さな花をつける。植物を学び始めた当初は、目立つものから覚えていっていたが、最近は花と実の存在感に大きな違いがあるものに惹(ひ)かれているような気がしていて、なぜか目立たない方を見つけたときの喜びの方が大きい。正月飾りなどにも使われるセンリョウの花などがまさにそうである。
(奄美博物館)