調べ直して日本初記録 与論で購入「ツバサキントキ」 鹿大研究チーム

2025年04月18日

新標準和名ツバサキントキの基準となった与論島産の標本(鹿児島大学総合研究博物館提供)

鹿児島大学総合研究博物館の本村浩之教授(51)らの研究チームは17日、日本初記録となるキントキダイ科の種を確認し、和名「ツバサキントキ」と命名したと発表した。確認されたのは2個体で、本村教授らが県内の海に生息する魚類の標本作成のために与論島など県内2カ所の市場で10年以上前に購入し、同館に「アカネキントキ」として所蔵。同大大学院連合農学研究科の橋本慎太郎さん(26)=博士課程2年=が昨年、研究の一環で標本を調べ直したところ、別の種と分かった。橋本さんは「日本からの初記録となりうれしい。この種の生態を引き続き研究したい」と話した。

 

キントキダイ科キントキダイ属のツバサキントキはこれまで、「Priacanthus alalaua(プリアカンサス アララウア)」としてグアム、ハワイ諸島、およびメキシコ西岸でしか記録されていなかった。

 

今回確認された個体は、2012年に与論島の市場、13年に鹿児島市中央卸売市場(口之島産)でそれぞれ購入した。当時は見た目が近い「アカネキントキ」として標本化し博物館に所蔵したという。

 

橋本さんが世界に生息するキントキダイ属魚類の分類を研究する過程で、同館所蔵の標本を調査。アカネキントキの標本の中に、橋本さんの感覚では明らかに異なる2個体があった。

 

文献調査に加えて、標本のあるハワイの博物館で調査。2個体の各部位の数や長さを現地の26標本と比較し同種と判断した。体長に対して胸びれが長いことが特徴で、翼を連想させることから「ツバサキントキ」。アカネキントキには腹びれの根元に黒いはっきりとした点があるが、ツバサキントキには無いか、あっても極めて薄いという。

 

本村教授は「(新種や初記録の種としては)サイズが大きく、また食用でもある魚の中にまだ知られていないものがあったことに驚いた。まだまだ鹿児島の海を調査する必要がある」と語った。

 

研究の成果は日本生物地理学会が発行する「Biogeography」2025年27巻(4月14日公開)に掲載されている。