サシバの謎解明、保全へ 越冬地奄美でGPS装着 日本鳥類保護連盟

2024年02月29日

GPSを装着したサシバ=28日、奄美市

絶滅危惧Ⅱ類に指定されている猛禽(もうきん)類の渡り鳥サシバ。謎が多い渡りの実態や生態を解明することで保全につなげようと、日本鳥類保護連盟(東京都、小宮輝之会長)の調査員らは26日から奄美大島に入り、島内で越冬するサシバにGPS(全地球測位システム)タグの装着作業を行っている。28日までに6羽への取り付けを完了。作業最終日となる来月3日までには計11羽の装着を目指す。

同連盟は、生息分布の急激な縮小により個体数を減らすサシバの保護には、繁殖地、中継、越冬地の国境を超えた連携が重要だとして、保全プロジェクトを発足。クラウドファンディングで支援を募り、約2千羽が飛来する国内最大規模の越冬地、奄美大島での生態調査に乗り出した。

GPSによる渡り経路の追跡調査は、これまでに石垣島や西表島、千葉県などでも行われている。奄美大島で越冬するサシバの移動生態や距離の知見を得ることができれば、前例の調査データと合わせ、全国のサシバの越冬地を予測することも可能になるという。

採血を行う捕獲従事者ら=28日、奄美市

今回装着されたGPSタグは、体長約50センチ、体重400グラム前後が平均とされるサシバへの負担軽減を考慮し、10・5グラムと軽量のもを使用。装着時には、基礎データとなる体長や重さ等の測定のほか、性や遺伝タイプを識別するための採血なども実施された。

同連盟調査研究室の藤井幹室長(54)は「奄美大島は越冬地の北限であり、宮古島などで確認されている越冬数はわずか。もし、奄美で飛来する個体が国内だけでなく国外からも来ているという結果が出れば、さらに南下せずともサシバを支えられる豊かな環境があることが示される」と期待を込める。

捕獲従事者でアジア猛禽類ネットワークの山﨑亨会長は(69)「奄美で越冬している個体の繁殖地は全くの謎。島の子どもたちに出前授業を行っているが、『ここのサシバはどこに行くの?』と問われても今は解がない。子どもたちの『知りたい』の答えが見つかればうれしい」と話す。

保全プロジェクト活動参画団体はアジア猛禽類ネットワーク、日本自然保護協会、日本野鳥の会、奄美野鳥の会。