南西諸島への輸送力強化 日米共同訓練、進む民間との連携 瀬戸内町で適地調査も

2024年12月05日

政治・行政

自衛隊海上輸送群(仮称)が運用する輸送艦「にほんばれ」の命名・進水式=10月29日、広島県尾道市(陸上幕僚監部広報室提供)

奄美大島、徳之島を含む日本各地で日米合わせ約4万5千人が参加した日米共同訓練「キーン・ソード25」(10月23日~11月1日)。前後には「陸上自衛隊演習」も行われ、9月末から11月上旬にかけ奄美群島各地で自衛隊や米軍が訓練を展開した。島の地形を活用した生地(せいち)訓練の合間では、自衛隊や在日米軍の輸送隊が島内外の民間運送会社と連携し、輸送手順を確認する訓練も。本土から南西諸島への輸送力強化に向け、船舶取得に加え民間との連携強化も進んでいる。

 

■民間輸送力

 

自衛隊は有事の際に占領された離島奪回を任務とする「水陸機動団」の増強や、管轄を超え全国に展開する陸自の「機動旅団」化を進めており、奄美大島や徳之島では実動訓練が多く行われた。一方で海上自衛隊が保有する輸送艦艇は5隻。海自が担う警戒や監視の任務もあるため、陸自が南西諸島へ部隊を輸送するには定期フェリーや防衛省が契約する民間資金活用(PFI)船舶など、民間船の運用が必須となっている。

 

奄美市の名瀬港には10月10日から11月11日にかけ「はくおう」など防衛省のPFI船舶や、米国籍貨物船が6回入港。延べ850人以上の隊員、300台以上の車両輸送が行われた。訓練には鹿児島―奄美―沖縄を結ぶ定期フェリーも活用され、11月5日には名瀬発鹿児島行きの「フェリーあけぼの」が一般客兼用の臨時便として運航。90式戦車などを含む車両計約110台、旅客計250人を輸送した。

 

奄美市笠利町の奄美空港には空自や米軍の輸送機が少なくとも6回飛来。10月21日には北海道から空自輸送機で運んだ弾薬を島内の民間運送会社の車両に積載し、陸自分屯地へ運ぶ弾薬輸送訓練もあった。

 

一方、沖永良部島では空自の地対空誘導弾「PAC3」を持ち込む訓練が予定されていたが、悪天候が続き民間の定期フェリーが連日抜港。訓練自体が中止されるなど海上輸送の弱点も浮かんだ。

 

■海上輸送群

 

10月29日、広島県尾道市生口島で自衛隊の小型輸送艦(約2400トン)の進水・命名式が開かれた。艦名は「にほんばれ」。今年度末までに新編予定の陸海空自の共同部隊「自衛隊海上輸送群(仮称)」で運用される初の輸送艦だ。11月28日には中型艦「ようこう」(約3500トン)の進水式もあった。

 

同群は有事に備え、全国から奄美群島を含む南西諸島への部隊や装備品を迅速、確実に輸送することを目的に新設される。本土と島しょ部間の輸送を担う中型2隻、水深の浅い島の港に輸送可能な小型4隻、小型級でも接岸できない小島へ輸送する機動舟艇4艇が配備される計画。防衛省は来年度予算の概算要求でPFI船舶6隻の確保に509億円、PFI船舶を使用した輸送訓練や港湾入港検証に16億円を計上している。

 

瀬戸内町の須手地区では自衛隊艦艇の輸送・補給拠点となる新たな港湾施設の開設に向け、昨年秋から適地調査が続いている。九州防衛局によると11月20日時点で環境アセスメントなどは計画通り進行し、調査は来年1月ごろまで実施予定。適地と判断されれば、港湾施設の規模や配置を定める具体的な計画が進むとみられる。

(佐藤頌子)