コンクリ建築で4冠達成 笠利町出身の山下さん
2018年12月19日
地域
奄美市笠利町屋仁出身の建築家山下保博さん(58)が代表を務める建築設計事務所「アトリエ・天工人」(東京都渋谷区)が設計した住宅「R・トルソ・C」に、国際コンクリート工学連盟(fib)から最優秀作品賞を贈られた。この賞を含む国内外のコンクリートの重要な賞の4冠を達成したことになり、祝賀会が11日、東京・原宿であった。
山下さんらが設計した住宅は、南九州の火砕流堆積物シラスを細骨材に利用したコンクリートを建築分野で初めて採用。斬新さと強度を兼ね備えているとして国内外から注目され、これまでに▽日本コンクリート工学会の「作品賞」(16年)▽米国コンクリート工学会(ACI)の「総合部門最優秀賞」と「低層部門第1位」(17年)―の3賞を受賞していた。
同事務所広報によると、シラスコンクリートは▽100%リサイクル可能▽キメの細かい表面は手触りが良い▽多孔質で消臭作用もある▽シラスの有効活用で地域活性も期待できる―ことなどもあって研究者や建築関係者から評価を受けた。
4冠受賞祝賀会には約100人が参加。山下さんは「コンクリートの世界で重要な賞を全て受賞できうれしい。『シラスコンクリート』を共同開発した野口貴文東京大学教授、佐藤淳東京大学准教授をはじめ、建築・施工関係者、そして私を支えた郷土の皆さまに改めて感謝を申し上げたい」と謝辞。
「クライアントからの『コンクリートで内部を包み、そしてそのコンクリートが挑戦的で環境的であってほしい』という熱意あるオーダーが新素材開発の原点」とエピソードを披露し、「今後も地域素材を利活用する新素材の開発を継続したい。また、空き家を活用して奄美で展開している伝泊(伝統的な建築様式と集落、文化を次世代へつなぐ宿泊施設の運営)などの活動を通じ、社会に貢献したい」と抱負を述べた。